醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔おすすめ本〕江國香織 「神様のボート」

淡々とすすむ日々。けれどそこはいつも狂気でみちている。

神様のボート (新潮文庫)

神様のボート (新潮文庫)

葉子と草子の親子は、母と私の関係とよく似ています。まるで自分たちの生活を眺めているよう。だから恋の狂気を知り始めた今でも、私は草子のままなのです。草子と葉子の語りが交互に続くこの物語の中で、いつも草子の側から見つめています。

じっくりと文字を追い、一文一文を手で書き写してみたら、新たな発見がありました。葉子のピアノの看板は、きっと「ホリー・ガーデン」の静枝が描いたのですね。読み飛ばしている部分の多さに反省です。

 ピアノ教えます、という看板は、従姉の親友がかいてくれた。全体がうすい桃色で、いちばん下に鍵盤の絵がかいてある。*1

 草子は、私の子供のころに似ていない。むしろ従姉の美保子ちゃんに似ている。〔中略〕美保子ちゃんは私より二つ歳上で、妹の果歩ちゃんは私より二つ歳下だった。*2

ホリー・ガーデン (新潮文庫)

ホリー・ガーデン (新潮文庫)

「ホリー・ガーデン」は果歩と静枝の物語。

*1:江國香織 『神様のボート』 (新潮文庫) 新潮社 2005.6 p.14

*2:同上 p.65