瀬戸内寂聴 「私の好きな古典の女たち」
「万葉集」「とはずがたり」「和泉式部日記」「蜻蛉日記」「堤中納言物語」「源氏物語」。それぞれの古典文学作品に登場する魅力的な女たち。千年経っても人の物思いは変わらぬもの。より親しみを持って古典を見つめることができる一冊だ。古典に苦しむ受験生にもぜひお勧めしたい。
- 作者: 瀬戸内晴美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1985/05
- メディア: 文庫
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源氏の女たちの中では誰が好きか、という話は以前にも書いた。人それぞれ好みもあるだろうが、男性と女性できっぱりと意見が分かれるのは六条御息所だろう。嫉妬の塊となり、源氏の愛する他の女たちを取り殺した高貴な女性。男にとってこれほど疎ましく恐ろしい存在は無いだろうし、女にとってこれほど共感をそそる存在も無い。
じっと感情を押し殺し、表面では穏やかに年若い恋人を帰す。しかしその情念は肉体を離れ、他の女を呪い殺す。愛し憎む男ではなく、ライバルの女たちに取り付くというのが、いかにも女らしく哀しい。怨んでも恨んでも、愛する男には手を出せない。