〔映画〕女は歳をとるほど奔放であれ。~ 井口奈己監督「人のセックスを笑うな」
美大生で十九歳の「みるめ」君(松山ケンイチ)が恋をしたのは、三十九歳のユリちゃん(永作博美)。二十歳も年上の、リトグラフの非常勤講師だった。
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はじめて映画を見た時は、おれはみるめ君のほうに歳が近かったから、ユリの奔放さにみるめ君と一緒に振り回されていた。酔っ払って終電を逃して、パンプスも抜いじゃって朝方ふらふら歩いている。せっかく軽トラに乗せてあげたのに、次に逢った時にはなんにも憶えてないような素振りで煙草をふかす。
なんでもないことように気軽に、アトリエへみるめ君を誘う。同級生のえんちゃん(蒼井優)には無い大人の女の魅力。そうかと思えば子供のようにはしゃいで見せる。
で、おれはえんちゃんがそうであるように悔しいけれど、ユリに憧れてしまったのだった。おんなじような格好がしたくて、ベージュのスカートと赤いカーディガンを買ったりして。冷蔵庫にコロナをそろえて、サウンドトラックまで買って、歌いながら自転車で土手を走るユリを真似してみるのだ。
あれから十年が経って、みるめ君とユリちゃんのちょうど真ん中の歳になった。おれはみるめ君やえんちゃんの真っ直ぐさよりも、ユリの気儘な狡さの方に近くなったような気がする。
原作の小説は山崎ナオコーラさん。
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