ステイタス
夜学に通って社会人学生に囲まれていたおれは、「社会人」に憧れていた。学生だったおれにとって「社会」は少し遠い仮想の世界だった。社会人たるもの、週に5日、日に8時間くらい働くもの、とどこかで思っていたのだろう。大学を出たおれは非正規雇用ながら、本当にそういう生活に踏み込んだ。それが大人として生きていくステイタスだ、と思いこんでいた。
それは、誰に対してのステイタスだったのだろうか? 正社員になったって安泰とは云えないこの世の中で。世間に胸を張るためか? 親に安心を与えるためか?
筆で生きることを決めた日から、世間体なんてとうに棄てた。おれは恥をさらして生きてゆく。心配する親もすでに亡い。おれはもう、おれの人生を生きていいのだ。
そんなことを図書館のカウンターで思う。
ヒグラシ文庫へ。日本酒、アンチョビ豆腐、とんぶりコンビーフ。山本餃子へ。焼き餃子、瓶ビール、鶏ラーメン。これからライブで演奏するという人たちがちらほら。