日本展示学会の「展示論講座」を受講しました(2)
講義まとめの続きです。(1)はこちら。
講義3■吉冨友恭(東京学芸大学)ちいさな企画展ユニットをつくる―巡回展を例に―
毎回企画展を考えるのは大変。予算的にも大きな負担になる。そこで、東京学芸大学の学生らによって、手軽に巡回展のできる小さなユニットの展示を制作している。
「雨といきもの展」
強化ダンボールで什器を作る。運搬しやすくて折りたたみも可能。このダンボールで、トランク型の展示もつくってみた。トランクを開くと展示になる仕組み。
雨に関する言葉が、雨粒ようのうに落ちてくる映像展示もある。これも、スクリーンは折りたたみのできるダンボールでつくっている。身体にあたった言葉は跳ね返ったり、降り積もったりする。
「魚道展~川を旅するサカナたちの通り道~」
「雨といきもの展」同様、水の巡回展ネットワークによる。こちらでもトランク型の什器を使って、それぞれの魚の旅の情報を入れて展示した。展示のブラッシュアップを図るため、
- 行動追跡調査(観察法)
- 聞き取り調査(面接法)
これによってわかったこと。カードを置くと魚の料理の説明が始まるという展示は、「カードを置く」という動作が理解してもらえない。そこで、操作ガイドを設置した。足元に近い展示はほとんど見てくれない。下の方にも目線を引くものを付けてみた。テーブル状のものはその存在にすら気づいてもらえない。これは大幅につくり変えることにした。ビー玉を転がすことで、魚の回遊のパターンを辿れるようにした。改善結果を検証してみると、もとから作り直すくらいの改善じゃないと結果はでないことがわかった。
「こすげ名人にせまる」
環境専攻の学生と美術専攻の学生の連携で展示をつくった。段ボールで額をつくってパネルとする。一つの説明が一枚のパネルに完結しているので、スペースにあわせて並べ替えられる。運搬しやすいように専用の折りたたみ式の箱もつくった。