醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔おすすめ本〕仕事は「ロケットスタート」で集中すべし。~中島聡『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』

著者は、米国マイクロソフト本社でWindows95の基本設計を担当した中島聡(なかじま・さとし)氏。「右クリック」「ダブルクリック」「ドロップ&ドラッグ」の生みの親で、現在はUIEvolutionのCEOである。プログラマーとしての視点から仕事術を説く。

なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である

なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である

氏の生い立ちや、「ロケットスタート時間術」が生み出されるまでを語った前半は、読み飛ばしてよさそうだ(Windows95の誕生秘話やビル・ゲイツに興味があれば面白いと思うけど)。肝心なのは4章の153ページから。

新しい仕事を取り組むときは、最初の2割の期間に超集中モード(本書の中では、『ドラゴンボール』の10倍界王拳として説明されている)でスタートダッシュし、「ほぼ完成(8割の出来)」にまで持っていく。最初の2割で「ほぼ完成」に達しない場合、その仕事は〆切までに終わらないので、〆切延長の交渉をする。交渉をするならできるだけ早いうちがよい。

新しい仕事にどのくらい時間がかかるかは、やってみるまではわからない。だからとにかく、まずは手を動かす。〆切間際に徹夜をしてもプレッシャーで集中力は途切れてしまうから、徹夜をするなら最初の期間だけにする。この期間は世を捨てた仙人のように、とにかくそれだけに集中し、完成度を高める。マルチタスクはしない。メールすら見ない。とにかくそれだけをやる。

最初の2割でほぼ完成したとしても、すぐに提出してはいけない。次々に仕事を依頼されることになってしまうからだ。いつも「10倍界王拳」モードで仕事はできない。安定した仕事を続けていくにはゆとりが必要だ。最初の2割でほぼ完成までもっていったら、あとの8割は「流し」の期間とする。ゆるゆると他の仕事をしながら見直して、完成度を高めておく。

この緩急の付け方は、一日の時間の使い方でも同様に行う。集中するのは一日の2割を占める早朝の時間。午後はゆるゆると、メールの返信や会議などをいれる。朝一から超集中モードで仕事にとりかかれるように、必ず前日の寝る前までに、次の日のTodoを整理しておく

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――野原のノートより。

出張と会議が連続する日々のなか、どうやったら集中して作業できる時間を抽出できるのか悩んでいた。悩む前にやればいいと思うが、どうやったら取り込む気になれるのか……そんな時に本書を知った。それまでTodo管理アプリとGoogleカレンダーでタスク管理を使用していたが、読了してからは手書きのノートをここに追加。Todoアプリは備忘録として補助的に使う。そして、どんなに酔っ払って返ってきても、明日やることを手書ききで書きだして、優先順位をつけておく。そうすると、なぜか朝早くに目が覚める。「明日はこれをやろう!」と決めると、わくわくして起きられるようだ。手で毎回書くというのが、またいいのかもしれない。

ただし、どうしたってこの仕事術は、10日くらいのスパンで1案件ずつこなしていくプログラマー向け。それ以外の職種でも応用できるような工夫(長期の仕事は縦に切る、「並行して進む仕事」は1日を横に切る)は、編集者とともに編み出した苦肉の策なのでは。すべてこの通りにはできないだろうが、ポイントポイントを取り入れていくと面白そうだ。