醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

アンチ東京の風潮がわかっていないのは東京のやつだけだ。都築響一×仲俣暁生×ミネシンゴ「本屋<で売ってない本>大賞 ♯本屋とデモクラシー」に行って来ました〔前編〕

本が売れない時代だという。書店業界は必死だ。なんとかして本を売らねばと、「本屋大賞」なんてものも生み出されたりしている。いやもしかして、「本屋」という形態そのものが今の時代には合わなくなってきているのではないか? 私自身も、本屋で見つけた新刊をその場でググってKindle版で買うようになってきた(本屋さん、ごめんなさい)。本屋にお金を落とさなくなっている。

こんな時代でもしぶとく生き残る本屋は、その本屋にしかできないことを追い求める個性派書店だけかもしれない。そんな書店のひとつである文禄堂高円寺店で、「本屋<で売ってない本>大賞」という、なんだか逆説的なタイトルのトークイベントが開催された。

f:id:mia-nohara:20170501083038j:plain
早めに着いたらうっかり最前列になってしまった。


登壇者は、いつもお世話になっている編集者の中俣暁夫さん、逗子鎌倉の同志・編集者のミネシンゴくん、そして『秘宝館』などの写真集でお馴染みの都築響一さん。

アンチ東京の風潮がわかっていないのは東京のやつだけだ

さて、都築さんの代表作のひとつに、『TOKYO STYLE』がある。

上京した若者の部屋を撮り続けた写真集だ。何かを成そうと思ったら東京に出てこなければいけなかった時代の記録。いや、今だって都内の大学に進学したい学生は上京してくるけれど、わざわざ体ごと出てこなくても、インターネットで容易に世界へ発信できるようになった。東京がすべての中心だった時代は、そろそろ終焉を迎えようとしているのかもしれない。東京で新しいことを始めようとしたら、やたらとお金がかかる。消費経済が神様みたいな街だからだ。実は地方のほうが、新しいことを始めるハードルが低くなっているのかもしれない。お店を始めるにしても家賃も安い。東京に出てくるモチベーションは薄れつつある。

かつて、東京はごった煮みたいな面白い場所だった。でも今では、「東京ではない場所」のほうにこそ、面白いものが転がっていると都築さんは言う。今の都築さんの仕事は、地方へ出掛けて行って取材して、安いビジネスホテルで原稿を書くというスタイルになっているそうだ。読者の代わりに地方へ出向き、そこでしか見つけられないものを自らの視点で切り出すのだ。

(つづきは次回!)

後編はこちら>>>編集は引き算の美学、電子は足し算の美学。都築響一×仲俣暁生×ミネシンゴ「本屋<で売ってない本>大賞 ♯本屋とデモクラシー」に行って来ました〔後編〕


本屋<で売ってない本>大賞 ♯本屋とデモクラシー
2016年10月29日(土)17:00~18:30
文禄堂高円寺店イベントスペース
1,500円(1ドリンクオーダー制)

都築響一(編集者、写真家)
仲俣暁生(編集者、文筆家)
ミネシンゴ(編集者、『美容文藝誌 髪とアタシ』編集長)

peatix.com