醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕朝日

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  • 雪空、
  • 痒いところを
  • 掻く
  • 山頭火

復帰一週間前から、少しずつメールを読み始めて、リハビリのように仕事に戻っていこうと思っていたが、とてもそんなふうにはならなかった。最後の一日。

朝日が昇ってくるのが恐ろしい。こんなにも美しい日の出なのに、朝日に照らされた布団の上で動悸が止まらない。一日が始まってしまう。また新しい一日が。なぜ自分はまだ死ねないのだろう。もがきながら手を伸ばした先には、ジロウが三十年前に買ったという『なまけ者のさとり方』があった。

なまけ者のさとり方 PHP文庫

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いつでも自分は光になれるし、時間だって関係なく好きな場所にいける。それならまだ、この物質界にいたっていいじゃないか。だって朝日はあんなに美しいのだから。さらに手を伸ばした先のiPhoneを開くと、Facebookで友人の何人かが、癌で若くしてなくなった女性から世界への手紙をシェアしていた。まだ私は引き留められているのだ。

起き上がる。ゆっくり風呂に入って、気持ちを落ち着ける。しばらく、ちゃんとモーニングページを書いていなかったことを思い出す。ポジティブなことだけを書こうとしていた。それじゃあ駄目なのだ。ドロドロしたことも、きちんと吐き出さねばならないのだ。

ずっとやりたかったことを、やりなさい。(2)

ずっとやりたかったことを、やりなさい。(2)

小説も少し書いた。長いブログも書き始めた。大丈夫、まだ書ける。

ジロウが布団の上で「おはよ」と言う。大丈夫、ちゃんと朝が始まっている。

ジロウの経理の仕事が終わるのをまって、jijico へ。ダルバートとラムカレー。「コーヒーを飲んで考えごとをしたい」と言うので、駅前のスタバに行くが寒い一階席しか空いていない。駅上のカフェに行くことにする。

ブログの続きを書く。ジロウは先に出勤していった。自分の中の人に「1時間だけだけど、一緒に遊ぼう。何をしたい?」と訊ねる。中の人は小声で、「文房具が見たい」と言った。

島森書店を散策する。ノートを一冊買う。長期バイト募集のビラが貼ってあった。そういえば大学図書館を辞めた時、書店でバイトをしてみたいとも考えていたっけ。

東京の林君から来信、すぐ返信を書く、お互に年をとりましたね、でもまだ色気がありますね、日暮れて途遠し、そして、さうだ、そしてまだよぼ/\してゐますね。……

種田山頭火 行乞記 三八九日記

ヒグラシへ。お下劣な話の席に入ってしまって蘭子ちゃんに心配される。常温、備長マグロの漬け、アワビのバター炒め、ペンネ

「その選択肢で迷って鬱になるなら、それは羨ましいことだよ。誰でもできることじゃないからね」
確かにそうだと思う。贅沢な鬱のあり方なのだろう。