醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕ドヤ顔の北斎ジジイの魂

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  • 庵はこのまゝ
  • 萠えだした
  • 草にまかさう
  • 山頭火

そして私は出て行く、山を観るために、水を味ふために、自己の真実を俳句として打出するために。

種田山頭火 其中日記 (六)

如月十六日、曇り。

依頼されていた仕事がひと段落したので、ずっと放置状態だったアメブロをてこ入れしようと思う。アメブロのほうは、もっと語りかけるような文章にしてみたいのだけれど、これは自分の性質なのか、どこまでも独り言っぽくなってしまう。もしかすると、直接誰かと話しているときも、おれは独り言を話しているのではないか?

6時39分に起きる。風呂で本を読む。読んだ本は以下の通り。

入浴時間は1時間6分22秒だった。この冬、あんまり長く風呂に入りすぎたのか、天井に黒カビがひろがり始めてしまっていた。試しに、過炭酸ナトリウムと重曹を混ぜて水でのばしたものにキッチンペーパーを浸し、クイックルワイパーの棒を使って天井にパックのように貼り付けてみる。しばらく放置。ちょっと効いたような気がしないでもない。

原稿の修正部分をチェックし、小説を書く。

ジロウの「ダメになった」はずの予定のひとつ、新・北斎展 HOKUSAI UPDATEDが、実は21時まで開館時間を延長していることがわかった。午後になっていたけれど、出掛けることにする。

歩いている最中に、なぜか右手の薬指から血が出る。何かに当たってスパンと切れたらしい。女子力の高いジロウのティッシュケースの中から絆創膏が出てくる。

Pho RASCALでまずは腹ごしらえ。白身魚と胡麻のフォー。ジロウはカオソーイ(ラオスの汁ビーフン)。フォーって、ボリューム少なそうだけど、わりとお腹いっぱいになる。米粉って腹持ちがいいのかもしれない。

湘南新宿ラインで六本木を目指す。電車の中でYagisaya TVを聞きながらアブラサスのメモ帳でメモを取る。途中、心地よく寝落ち。電車で眠るのは気持ちいい。

恵比寿で乗り換えて六本木に到着。新・北斎展は60分待ちだという。ちょっとコーヒーでも飲んで休憩しようかと思ったけれど、カフェにも列ができている。おとなしく、美術館の列に並ぶことにする。

当日券を買うまでが40分、そこからエレベーターに乗るまでが20分、さらに開場前で20分並ぶ。すごい、アトラクションの行列みたい。

すべての絵を見るのはあきらめて、目の前でぱっと、たまたま人の波がはけたところの絵を見ていくことにする。「その絵を見ていけ」と画狂老人が選んでくれているのだと思って。

北斎によるイラスト見本帖「北斎漫画」、ひとつひとつ笑わせてくれる。絵描きに向けたイラスト見本だけじゃなくて、職人向けの図解もある。

とにかく描くのが好きで好きで、6歳で始めて筆を持ってから90歳で死ぬまで、本当に活き活きと描いていたのだろうと思った。ドヤ顔の北斎ジジイの魂を会場に感じた。

森アーツセンターギャラリーのカフェでアールグレイを飲んで休憩。北斎にちなんだ特別メニューが饗されていた。

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これは赤富士カレー。

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北斎漫画がのったパフェ。

日比谷線で恵比寿に戻る。恵比寿神社にお参りして、今市で呑む。イナダの昆布〆、漬け物盛り合わせ、もろみ漬け豆腐、熟成豚串青唐辛子味噌。

鎌倉へ戻る。ジロウは大船のZumaの10周年へ。ヒグラシ文庫へ。菊水常温。

「北斎なんて全然すごくないですよ。やりたいことやってただけでしょ? 会社員じゃなくて、フリーターだし!」

「たくさん書きなさい。大切なのは、たくさん書いたものの中から何を選ぶかだよ」

釈迦へ。一ノ蔵、一口ステーキ。「だって、友達ですから」と言われたのが、思いがけずうれしかった。「友達だよね?」でも「友達だもんねー」でもなく、「友達ですから」という断定が。

ジロウと合流するものの、呑みすぎてエンジンのかかったジロウはさらに呑み歩きに出掛けて行った。先に帰宅。0時27分に寝る。