醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

蚕豆を剥く

雨だと言うのにお店は大繁盛。ゴールデンウィークの後の静けさが嘘のよう。注文をとる、料理を出す、食器洗浄機と闘う。気温は低いけれど、ひたすら飛び回っているので汗をかく。食器洗浄機からもうもうと立ち昇る湯気にのぼせる。

開店前の掃除から、ランチタイム、夜の会席の準備まで終えると、へとへとになる。夕方の授業では思わず舟を漕いでしまう。だけれど、なんて心地の良い疲れだろう。

少々贅沢なランチメニューなので、お客さんにはゆったりした方が多い。ご婦人方が最も多く、ついで大学教授。時折学生も暖簾をくぐる。ゆったりとお昼を食べにいらっしゃる人の笑顔は、のんびりと温かい。洗い場、厨房、ホールを汗だくで飛び回っていても、そんなお客さんの笑顔をいただけると気持ちが和らいでいくのを感じる。

さて、私の担当はサービスが中心なのだが、時折シェフに厨房のお手伝いをさせていただくことがある。今日は蚕豆を剥く仕事。スーパーに並んでいる鞘つき蚕豆のあまりの大きさにたじろぎ、「こ、これは下ごしらえをするのが大変そうだ」と敬遠していたが、意外と鞘は柔らかく、剥きやすい。肉厚でふかふかの鞘にくるまれた蚕豆が姿を見せるのは、なんだかとても可愛らしい。

普段はまかないをいただいて帰るのだが、あいにく水曜日は早くから授業が始まる。ランチタイム終了とともに早引きの準備をしていると、シェフがこっそり作った混ぜご飯のおむすびを手渡してくれる。