2013-01-01から1年間の記事一覧
なんとも百合な、官能的な夢を見て目覚める。しばらく布団の上に座ったままぼんやりとする。同衾している彼女は現実では知らない女で、ゆるいくせのある長い茶色がかった髪をひとつに結い上げている。彼女が懇願するので、その裸の身体をくまなく撫でてやる…
大学四年のころ、授業が週に一時間しかなく暇だったので仕事を始めるつもりでいたが、結局身体を壊してしまい通院の日々になった。日が高くなってから起き出して、一日おきに病院へ行く。いつも混んでるし予約が出来ないので、たくさん本を持って行く。病院…
上京して初めて住んだ町は東村山。治安の悪さと大学までの遠さに辟易して、早稲田へ越した。早稲田は本屋と喫茶店と公園の充実した良い町だったけれど、海と山のある日々に焦がれた。いつかは鎌倉に棲みたいと思っていたけど、それは勤めなくても稼げるよう…
市川春子の漫画が好きだ。SFなのだけれど、どれもやけに現実の手触りがする。SFであることをつい忘れて、その世界の中に浸ってしまう。最初に出逢ったのは「25時のバカンス」だった。25時のバカンス 市川春子作品集(2) (アフタヌーンKC)作者: 市川春子出版社…
迷走するとお世話になるジュリア・キャメロンの本。ずっとやりたかったことを、やりなさい。(2)作者: ジュリア・キャメロン,菅靖彦出版社/メーカー: サンマーク出版発売日: 2013/01/09メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 2回この商品を含むブログ (…
スーツを着るのが嫌になった。雨で湿気た真っ黒のリクルートスーツを脱ぎ捨てて、薄汚れたパーカーに着替える。靴下にサンダルをひっかけ、財布を片手に握りしめて「三日月」の扉を開ける。三日月は学生街の裏道にあるバーだ。蔦が絡まって殆ど廃屋同然のビ…
ひさびさ休みがとれたジロウとOFUNA Live Party へ。大船駅から徒歩十分以内のお店十六店舗が参加する、大船街中ひっくるめたライブイベントだ。二〇〇〇円(前売り一五〇〇円)で各店舗出入り自由(各店舗一オーダー必須)。十七時から夜半過ぎまであちらこちら…
飼い主を拾ったのは冬の雨の夜だった。傘もささずにずぶ濡れで歩いていたから、手をひいて部屋に連れ込んだ。ぐしょぐしょに濡れて重たくなった背広を脱がせ、鴨居に掛ける。風呂をたてて布団を敷いた。湯からあがった飼い主にバスタオルを投げる。先に布団…
部屋に帰ると猫がシャワーを浴びていた。鍵を探しているあいだ、鼻歌が窓の向こうから聞こえていた。小さなアパートだから脱衣室なんてない。僅か四畳足らずの板の間が、玄関兼、台所兼脱衣場だ。床に無造作に投げ出されたバスタオル。僕は磨り硝子の扉の向…
子供の頃嫌いだったもの。ハンバーガー、スパゲッティ、生クリームの入ったクレープ。白いご飯、パフェ。アイルクリームののったメロンソーダ、ラーメン、お刺身。お子様ランチには食べたいものがなくて困った。甘いものが苦手なのは、子供の頃から。ラーメ…
「結婚して、幸せにしてもらう。」莫迦じゃないの、とおれは思う。与える、与える、与える、与える。それ以外のものは、愛とは呼ばない。そして、幸せであること程、苦痛なことはない。だからおれは、いつも幸せの反対を求めている。 結婚にはなんの希望も持…
夢。 おれが棲んでいた「実家」は、改装のため骨組みばかりしか残っていない。まるで木造の海の家みたいに。汚れた畳、吹き抜ける風。おれは友達の彼氏と付き合っていることになっている。彼は畳の上に座り、おれに「キスをしよう」という。「舌をいれていい…
「わたし、先輩がいたから吹奏楽部に入ったんです」佐々木瑞穂にそう言われたのは五月、演奏会に使う楽器を運び出していた音楽準備室だった。他の部員も顧問の教員もまだ来ていなかった。 「中学のときからずっと好きでした」瑞穂のことは、入部してくるまで…
インターネットで更新されていく、誰かの日記を見ているのが好きだ。真剣に読み込むことはあまりないけれど、更新されているとほっとする。今日も世界のどこかで、その人が呼吸して、食べて、笑ったり泣いたりしている。ブログを始めたのは大学生のときだっ…
台風二十六号が通り過ぎていった。三浦半島では虹が見られたらしい。facebookに虹の写真が次々に並ぶ。一昨日は調子に乗って呑み過ぎて(ヒグラシ文庫で日本酒二合半、レモンサワー。デポで泡盛、赤ワイン。ランデブーでも赤ワイン)、起きたら二日酔いで頭…
このまま雇われて働いていていいんだろうか、と近頃よく考える。書店には、おおげさな起業ではなくて、「ナリワイ」「3万円ビジネス」「1万円起業」や、ノマドワークを進める本が並んでいる。たとえば、こんな感じに。ナリワイをつくる:人生を盗まれない働…
皮膚科の待合室で、大きなモニターに映し出されるニュースを見ている。夕飯時のワイドショーだ。そういえば、昔テレビを持っていたときは、夕方のワイドショーをつけっぱなしにして夕飯をつくっていたものだった。二○一一年、アナログ放送が終了したときにテ…
恋人はいてもいつも淋しかった。彼がテレビを見ている背中をずっと見ていた。特に話をするわけでもなく、私のつくった料理を食べる。「美味しい?」と訊けば感想を言ってくれるけれど、自分から言うことは殆どない。冷めてゆく湯気。虚ろにテレビ画面を追う…
正社員になれば生涯安泰という、夢みたいな時代は終わってしまった。なにが起きても「自分は食っていける」という芯を持って生きていきたい。そのためには、好きなことを仕事にするのが、これからの時代にはいちばん地に足のついた生き方なのかもしれない。…
母校の進路指導の授業に呼ばれて、「先輩の経験談」とやらを話しに行ったことがあった。ほぼ半数が高卒で地元の職に就く山奥の高校である。大学へ進学するのは一割、それも推薦がほとんど。ほんとのところ、おれの経験談なんて大多数の後輩たちには役に立た…
霊柩車の助手席に乗って、病院を出る。 母の運転で数え切れないほど通った国道十八号線の高架。今母は物言わぬ物体になり荷台に積まれ、運転席にいるのは見知らぬ葬儀屋のドライバーだ。 行き交う車のヘッドライト。赤く光るテールランプ。暗く空に沈む観音…
買ったばかりのピアスもブレスレットも、ろくにつけないうちから壊れてしまう。 生体から溢れるエネルギーが強すぎるのだろうか。血のように燃え狂う赤と、ぎらぎらと煌めく金のエネルギー。それがおれの皮膚の下で龍のように暴れている。 酒を呷って宥め賺…
酒場で独りで呑んでいる女はみんな声を掛けられるのを待っている…わけではないから、そう無粋に口説かないでくれ。 男の目に下心の宿るときは、どういうわけかみな、寄り目がちになる。凝視して服の下まで透視しようとしているのか。何故か誰もが同じ表情を…
水族館劇場という名の劇団がある。おれはその劇団のことを立ち呑み屋でたまたま知った。しばらく活動を止めていたその劇団は、フクシマの後、ひっそりと、再び動き出した。何トンもの水が一斉に流れ落ちる。その派手な舞台で水族館劇場は知られている。演出…
銀座のクオリア・ジャンクションへ、水族館劇場*1の桃山邑さんの講演を聴きに行って来た。以下、メモより。後ほど纏めますが、ひとまずは箇条書きにて。 ファシズムに傾きつつある日本 リセットできない世界 希望を萎えさせるような出来事 フクシマ これから…
なんて不覚。 最終電車に乗せられてしまった。 ホームで見送る彼。ドアの傍で手を振るか、さっさと空いてる席に座ってしまうか、迷ってしまうじゃないの。 東京は詳しくないから教えてほしい、とメールした。それじゃあ、お台場でも行ってみようかと返事が来…
9月5日 波照間最終日。 十時ぎりぎりに荷物をまとめてチェックアウト。宿に荷物を預けて、北側の集落を散歩。「コート盛り」という、かつて物見やぐらとして使われていた、石と土を持った展望台へ登る。海の向こうに西表島が霞んで見える。 「あとふそこ」…
9月4日 宿のいかした自転車に足ヒレやゴーグルを詰め込んでニシ浜へ。宿の自転車はシティサイクル風なのに、サトウキビ収穫用のカゴが取り付けられていて超いかす。 青すぎる透明な海、白い砂、珊瑚礁、あんまり人間を怖れない熱帯の魚たち。 休憩しに浜に…
9月2日 京急で羽田へ。午後の飛行機で那覇経由、石垣島行き。夕闇迫る新石垣空港へ着。路線バスで市街地へ。ホテル・アビンハナにチェックイン。 石垣市街地ぶらぶら。役場前の割烹「八重岳」で呑んだくれ。オリオンビール、清福三合瓶、ラフティ、刺身盛…
歌うこと、について書こうとおもう。 歌は、おれの逃避であるのかもしれない。たとえば期末テスト前の一夜漬けで単語や漢字を暗記するのが厭になると、決まってそのへんのアルバムの歌詞を片っ端から覚えていった。書くものに行き詰まって酔っぱらうと、古い…