醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

2015-12-01から1ヶ月間の記事一覧

〔日記〕 死にたくなったら、図書館か古本屋か立ち飲み屋においで。

十二月卅一日 曇つて寒い、暮れてからは雨になつた、今年もおしまひだ。 見切の白足袋一足十銭、水仙一本弐銭、そして酒一升一円也、――これで私の正月支度は出来た、さあ正月よ、やつてこい! 種田山頭火 行乞記 三八九日記 大野隆司氏の絵葉書をいただいた…

〔日記〕 天使が堕ちていく話

鐘が鳴る 師走の鐘が 鳴りわたる 山頭火 十二月卅日 風は冷たいけれど上々吉のお天気、さすがに師走らしい。 私は刻々私らしくなりつゝある、私の生活も日々私の生活らしくなりつゝある、何にしてもうれしい事だ、私もこんどこそはルンペンの足を洗ふことが…

〔日記〕 戦場へ赴く人

誰もが 忙しがつてる 寒月があつた 山頭火 十二月廿九日 晴、紺屋町から春日駅へ、小春日和の温かさ。 ルンペンは一夜の契約だが、今の私は来年の十五日までは、こゝにゐることが出来る、米と炭と数の子と水仙と白足袋とを買つたら、それこそおめでたいお正…

酒場で酔い痴れた女

酔へば人が なつかしうなつて 出てゆく 山頭火 十二月廿八日 曇、雨、どしや降り、春日へ、そして熊本へ。もう三八九日記としてもよいだらうと思ふ、水が一すぢに流れるやうに、私の生活もしづかにしめやかになつたから。―― 種田山頭火 行乞記 三八九日記 呑…

ライターの顔

十二月廿七日 晴、もつたいないほどの安息所だ、この部屋は。 ハガキ四十枚、封書六つ、それを書くだけで、昨日と今日とが過ぎてしまつた、それでよいのか、許していたゞきませう。 種田山頭火 行乞記 (一) ライターを始めた最初の頃の仕事は、あらゆる品…

〔日記〕レモンサワーの燿き

十二月廿六日 晴、しづかな時間が流れる、独居自炊、いゝね。寒い、寒い、忙しい、忙しい――我不関焉! 種田山頭火 行乞記 (一) 2015年のいちばん夜が長い日は、なぜか彼方此方から注意喚起やお叱りやトラブル対応依頼ばかり届く一日だった。誤ったり改善案…