醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

2014-01-01から1年間の記事一覧

「幸せになるため」なんかじゃない。一緒に人生を冒険すると面白そうだから、結婚しましょ。

鎌倉に越してきて、一番最初にできた友達がミネくんだった。2009年の8月に鎌倉に越して、ミネくんが当時勤めていた美容室に始めて行った2010年6月までは、一人も顔なじみがいなかったのだ。そしてその頃、まだおれは野原海明じゃなかった。鎌倉でおれの古い…

「女」に「家」と書いて、嫁。

結婚式続きの週末だった。 「披露パーティーとか、おれたちもする?」 とジロウが訊く。いや、でも「両家のなんとか」とか、「親族一同」とかをやらなくちゃいけないのなら、それはいやだなぁと思う。おれは自分の家や親から逃れるために、籍を入れたのだか…

〔日記〕 鬱になる体質

がらになく真面目に仕事をし過ぎたようで、草臥れた身体と精神に、風邪とプチ鬱が同時にやってきた。「メール見るのやだよー、仕事なんてしたくないよー、やんなっちゃったよー、もう生きていたくなぁい、死んじゃいたぁい」と酔っ払ってぐちぐち言っていた…

十月某日

図書館で勤務後、自宅で少し仕事をする。ジロウ(ダンナ)が呑みに行きたくてうずうずしているので、一緒に出掛けることにする。酒場で出逢った二人は、やたらアルコール消費量の多いフーフである。「あさつき」で日本酒、いさきの刺身。ブリの刺身はおまけ…

〔おすすめ本〕満員電車から逃れた先にある未来の働き方とは ~ 「ワーク・シフト ―孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>」

今の人生に何が不満か?と訊かれたのは三年前のこと。いや特に不満なんてないけど、しいて言えば「満員電車で通勤すること」くらいかな、と答えた。朝の満員電車。これから会社に向かう人の顔を見るのが、おれは苦手だった。電車のドアが開くと、みんなレー…

本当にやりたいことは、余暇に後回しにしちゃいけない。

「海明ちゃん、最近は何の仕事してるんだっけ?」 と訊かれると、どう答えたらいいか悩む。 「うーん、四足くらいワラジ履いてる」 「えっ? どんな」 「えーと、とりあえず図書館はまだ続けてるよ。大学図書館から公共図書館に移ったけど」 「それから?」 …

非正規にはできない仕事をする為、正社員になる...のではなく、新しい働き方を始める。

どうやら日本の企業というのは、大学を卒業した直後でないと「新卒」として雇ってくれないらしい、バイト経験しかなくても、ひとたび大学を卒業してしまえば「中途採用」扱いになってしまうらしい......ということを知ったのは、大学三年になってからだった…

楽なことだけ仕事にしている人生は退屈だ

おれに本当にそんな仕事ができるんだろうか......と、暗澹たる気持ちで身支度をする。これまでの仕事があまりに楽すぎたのだ。楽の上にあぐらをかいていれば定期的に収入が得られたものを。でも、それでは生きている時間の殆どが暇潰しになってしまう。「ち…

他人の日記を読むよろこび。

他人の日記を読むのは面白い。人の日常を覗き見している後ろめたさみたいなものが少しと、ちいさく笑っちゃうようなくすぐったさがある。放浪記(初出)作者: 林芙美子発売日: 2012/10/04メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る林芙美子の放浪記は、…

書く行為はほとんど自慰である。

この四月から五月にかけて新しい仕事をふたつ始めて、休みなしフル稼働でやってきたので、今日はちょっと一息をいれることにした。これからおれの休みは「毎週末に定期的に与えられるもの」ではなく、「自分でいつ休むか決めるもの」に変わる。昨日の朝は身…

〔日記〕 関内へ

世間は祝日最終日。混み出す前に、鎌倉を離れる。 駅のパン屋でサンドイッチを買い、ホームで缶コーヒーを買う。まだ空いている車内で、旅気分の朝食。ARGのオフィスへ。はじめての月例会議。おれはなんだかとんちんかんなことを言ったような気がする。 この…

ヒグラシ文庫開店三周年記念対談「ヒグラシ文庫が歩き出した時」に行ってきました。

鎌倉の立ち呑み屋ヒグラシ文庫が、この四月二十日に三周年を迎えた。記念対談の「ヒグラシ文庫が歩き出した時」におじゃました。登壇者は画家の牧野伊三夫さん、作家の大竹聡さん。司会に編集者の鈴木るみ子さんと、ヒグラシ文庫店主の中原蒼二さん。ヒグラ…

映画「3月11日を生きて」上映@さくらWORKS〈関内〉に行ってきました

青池憲司監督のドキュメンタリー映画「3月11日を生きて」を観にさくらWORKS〈関内〉へ行ってきた。会場では石巻在住の写真家・阿部美津夫氏の作品も展示されていた。主催はアルファデザインとくるくる関内。震災発 | 証言集学校篇『3月11日を生きて』 青池組…

〔映画〕女は歳をとるほど奔放であれ。~ 井口奈己監督「人のセックスを笑うな」

美大生で十九歳の「みるめ」君(松山ケンイチ)が恋をしたのは、三十九歳のユリちゃん(永作博美)。二十歳も年上の、リトグラフの非常勤講師だった。

〔小説〕 亡い人の夢

震災の翌年。脳卒中で搬送された母は意識の戻らないまま集中治療室で二週間を過ごし、そして死んだ。亡くなる日の明け方に見た夢は、いつものように紺絣のもんぺをはき藍染のスカーフを頭に巻いた母が、まるで誰かの見舞いに来たかのようにすたすたと病院の…

情報社会学会「第六回知識共有コミュニティワークショップ (#ksws)」におじゃましてきました。

第六回知識共有コミュニティワークショップのお題は、基本に戻って「知識共有とは何か」をテーマに討議をする会。これなら初心者のおれもついて行けるかも...と、思い切って参加してみました。情報社会学会 -Infosocionomics Society- 国際大学 庄司昌彦先生…

Webマガジンのようなブログサービス「Medium」を始めてみました。

「マガジン航[kɔː]」の仲俣暁生さんがMediumを勧めていたので、さっそく登録してみる。野原海明 — Medium Mediumとはなにか つくったのはBlogger創業者であり、twitterの共同創業者でもあるEvan Williams氏。ブログのようであってブログではない。facebookの…

猪谷千香×岡本真「これからの図書館を考えてみよう」―『つながる図書館』刊行記念トークイベントにおじゃましてきました。

猪谷千香『つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)』刊行記念トークイベント、猪谷千香×岡本真「これからの図書館を考えてみよう」に行ってきました。以下、イベントでお二人が語られたことをまとめます。つながる図書館: コミュニティ…

日一日を丁寧に生きるために(過去記事まとめ 二〇〇六年一月~八月)

これらの記事を書いていた二〇〇六年は新宿区に棲んでいた。大学も三年生になり、東京の暮らしにも慣れてきたが、それでもどうしても抜けない違和感があった。なぜみんな、ドアの閉まりかけた電車に猛スピードで飛び乗ろうとするのか。なぜ、点滅を始めた青…

〔小説〕 ころぶ

豪快に酔っ払ってふらふら帰る道すがら、よろけて膝をついてしまって、わー恥ずかしいと思いながら家に辿り着く。ひとまず炬燵に潜り込んで眠る。深夜に目覚めたら、床や畳やソファーにぺとぺとと血の跡がついていた。今年買ったばかりのズボンは膝小僧が破…

「われわれの館」閉鎖後、図書館司書の求人はどこで探せばいいのか

図書館司書の求人情報サイト「われわれの館」は2013年10月に惜しまれつつも幕を閉じた。閉鎖後、私が巡回していたサイトを紹介します。

〔随想〕 ショートヘア

細くてやわらかく、天然パーマなのですぐに絡まる。乾燥しやすく傷みやすいのに、ずぼらなのでろくに手入れをしていない。美容師泣かせの髪をしている。小学生まではずっと髪を伸ばして三つ編みにしていたが、母親に「中学生になってまでそんな長い髪をして…

〔おすすめ漫画〕「役立たず」が「いるだけで迷惑」なヤツのために奔走する 〜 市川春子「宝石の国2」

市川春子「宝石の国」2巻が発売された。宝石の国(2) (アフタヌーンKC)作者: 市川春子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/01/23メディア: コミックこの商品を含むブログ (27件) を見る宝石の国(2) (アフタヌーンコミックス)作者: 市川春子出版社/メーカ…

おれたちは好きなことだけをして生きていく(過去記事まとめ 二〇〇五年十二月〜二〇〇六年四月)

まだブログを始めたばかりの、学生の頃に書いていた記事をひっぱりだしてみる。大学二年の冬から三年の春にかけて。周りはみんな、カラスみたいに真っ黒いスーツをまとい始め、おれはその列に入りたくなくてもがいていた。現実は厳しいなんて云わせない ~ …

「つながる図書館」刊行記念トークイベント 猪谷千香×仲俣暁生×内沼晋太郎 「図書館はコミュニティの核になるか」を聴きにいってきました。

「つながる図書館」の刊行記念トークイベントを聴きに、下北沢の不思議な本屋「B&B」におじゃましてきた。つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)作者: 猪谷千香出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2014/01/07メディア: 新書この商品を含…

〔随想〕成人の日

成人式も卒業式も結婚式も法事もせず、生きてきた。斜に構えてそういうことのすべてを莫迦莫迦しく思ってきたが、二十代も最後の年になって、駅前で振り袖の女の子を見かけたりなんかすると、やっぱりちょっとだけ羨ましいような気もしなくはない。着物には…