醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

よしもとばなな・奈良美智 「アルゼンチンババア」

単行本が初めて書店に並んだとき、私は「アルゼンチンバナナ」だとすっかりかんちがいしていました。「バナナ」と「ババア」。二文字違うだけなのにぜんぜん印象の違うタイトルだ……。

アルゼンチンババア (幻冬舎文庫)

アルゼンチンババア (幻冬舎文庫)

文庫版でも奈良さんの絵は見ることができるのですが、まだ読んでいない方にはぜひ単行本版をおすすめします。トレーシングペーパー。ちょっとしたしかけ。それはそれはふんだんに散りばめられた絵。

奈良さんの絵がところどころで区切ってくれるために、ばななさんの文章が一つ一つ染み入ります。ふだんならさらりと読み飛ばしてしまいそうなものまで。

アルゼンチンババア

アルゼンチンババア

「ああ、お母さんはこれに乗って旅をしていたんだ」
 だから、私も、私の体を、ちょうど車をメンテナンスするように大切に扱うようになった。ガソリンはハイオクなのかレギュラーなのか、山道には強いのか、雪が降ったらどうするのか、どういうもので塗装したらいいのか、燃費の悪い食べ物は何で、どう負担がかかるのか。自分の肉体は車だと思うとすごくわかりやすくなって、私は以前よりも健康にさえなった。*1

物語の細部は忘れてしまっていても、この部分だけは好きで覚えていました。自分の身体って、外からみると乗り物と変わらないんだ。この世を生きるための乗りもの。

余談ですが、奈良さんの遺跡くんの絵がすごく好きです。

*1:よしもとばなな 『アルゼンチンババア』 (幻冬舎文庫) 幻冬舎 2006.8 p.9