醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

年上のひと。 ~ よしもとばなな 「High and dry(はつ恋)」

High and dry (はつ恋)

High and dry (はつ恋)

年上の男のひとに憧れる時期……というのが、おんなのこにはある気がする。それはたいてい憧れに終わって、あわあわと消えてしまうのだけれど。でもそんな恋がみのるという物語もある。たとえばそれは、マツモトトモさんの「キス」。

キス 1 (白泉社文庫)

キス 1 (白泉社文庫)

高校生の主人公と、7つくらい年上のピアノ講師との恋。とても好きな物語で、何度も読み返した。でもそんなこと現実にはありえないよな、大人の男がコムスメなんて相手にしないよなと、その頃の私はどこかさめていた。

「High and dry(はつ恋)」も、年の離れた二人の恋の話だ。十四才の少女と、二十代後半の絵描き。昔の私には、おとぎばなしにしか思えなかっただろう。でも今、ほかでもない自分自身が、十五も年の離れた男の人と恋をしている。

だから中学生の夕子ちゃんと絵の先生キュウくんとの恋は、ゆめものがたりなんかじゃないんだ。ふたりのあいだにカラダの関係は無くて(あったらキュウくんは犯罪者だ……)、恋愛のどろどろした部分はまだ無くて、あったかいくうきが流れている。それはけっしてありえない恋なんかじゃない。小さな奇跡のように、微妙なカンケイではあるけれど。

そして私は、十代の頃のカラダをふくまない恋のカンジを思い出した。十四歳の感覚になって書ける、ばななさんはすごいなぁ。現役十四歳は、どんな気持ちでこの物語を読むのかなぁ。