年上のひと。 ~ よしもとばなな 「High and dry(はつ恋)」
- 作者: よしもとばなな
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/07/23
- メディア: 単行本
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年上の男のひとに憧れる時期……というのが、おんなのこにはある気がする。それはたいてい憧れに終わって、あわあわと消えてしまうのだけれど。でもそんな恋がみのるという物語もある。たとえばそれは、マツモトトモさんの「キス」。
- 作者: マツモトトモ
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2006/01/13
- メディア: 文庫
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高校生の主人公と、7つくらい年上のピアノ講師との恋。とても好きな物語で、何度も読み返した。でもそんなこと現実にはありえないよな、大人の男がコムスメなんて相手にしないよなと、その頃の私はどこかさめていた。
「High and dry(はつ恋)」も、年の離れた二人の恋の話だ。十四才の少女と、二十代後半の絵描き。昔の私には、おとぎばなしにしか思えなかっただろう。でも今、ほかでもない自分自身が、十五も年の離れた男の人と恋をしている。
だから中学生の夕子ちゃんと絵の先生キュウくんとの恋は、ゆめものがたりなんかじゃないんだ。ふたりのあいだにカラダの関係は無くて(あったらキュウくんは犯罪者だ……)、恋愛のどろどろした部分はまだ無くて、あったかいくうきが流れている。それはけっしてありえない恋なんかじゃない。小さな奇跡のように、微妙なカンケイではあるけれど。
そして私は、十代の頃のカラダをふくまない恋のカンジを思い出した。十四歳の感覚になって書ける、ばななさんはすごいなぁ。現役十四歳は、どんな気持ちでこの物語を読むのかなぁ。