醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

伊豆へ

東京は寒かったそうだけれど、伊豆半島はコートを着なくてもいいくらい、あたたかだった。海に降る雨というのを、はじめて見たかもしれない。

海は夏、青空、入道雲というイメージがあって、紅葉の山と時雨の中の海だなんて、なんだか違うものみたいだ。海の傍に住んでいるひとたちには、笑われてしまうかもしれないけれど。

今年は紅葉を見逃したなぁと思っていたけれど、思いがけず伊豆で真っ盛りの紅葉を見られた。潮風に吹かれながら、真っ赤に染まったもみじ。遠くに、海鳴りの音。

フロントガラスが波をかぶって塩の結晶ができてしまう。海の傍で住んでいるひとたちは大変だろうなぁ。なにもかも、しょっぱくなってしまいそうだ。

でも、あこがれ。いつか、海の近くで住みたいと思う。

一泊目は下田で。ずいぶんといいホテルでびっくりした。広い部屋に、月の満ち欠けの壁面。
下田の港が見渡せる。山側のお風呂からは紅葉が見えるし、海側のお風呂は、まるで湯船が水平線まで続いているみたい。海の色と同じ色の、淡く緑がかったタイルが敷き詰めてある。砂浜のように、浅くなっているところもある。

二泊目は熱川。とっても熱いかけ流しのお湯。ちょっとつかるだけで汗だくになる。

午後からヨリの仕事が入ってしまったので、明るいうちに帰ってくる。ずっと一緒にいて、また別々の生活がはじまる瞬間は、いつものことだけどすごく辛い。できるだけその辛さを感じないように、アンテナの感度を下げる。明るいひかりの中でおひるを食べて、私は私のリズムを取り戻す。