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醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

「すぐやる」だけでは仕事は終わらない。~ マーク・フォスター『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則・完全版』

書評

仕事術の本が好きだ。ビジネス書を読むのは、おれにとってほぼ娯楽である。だけど、「これは」と思う仕事術の本には滅多に出会えない。そんな中、『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則 完全版』は久し振りのヒットだ。ぜひともご紹介をしたい。

仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則・完全版

仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則・完全版

「なんでARG(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)に入ったの?」とよく訊かれる。かっこいい志を答えたいところだが、本音は、代表の岡本真氏の働き方に興味があったから。初めての会議で岡本氏が説明した働き方は、そんじょそこらの仕事術の本よりもよっぽど面白かった。ビジネス書マニアとしては、飛び込んでみずにはいられない。

ARGでは、スケジュール管理は徹底してGoogleカレンダーを使う。会議の予定だけでなく、作業時間も入力するというのが、推奨される時間管理方法だ。ただ、自分はこのやり方ではうまくいかないと、3年間の業務を通してひしひしと感じていた。あまのじゃくのおれは、先に自分の予定を決めると、絶対違うことをやりたくなるのだ。

書店でもよく見かける「すぐやる」仕事術も試してみた。細かい仕事はパッパと終わるが、大きな仕事はなかなか思うように進まない。反射的に初めてみても、工程計算ができないので、〆切間際に血を吐きそうになる。

がっちりした時間管理に向かない自分が、工程管理をしつつ、やる気を保ちつつ仕事をするにはどうすればいいのか。長く悩み続けていたことの答えを、この本で見つけられたかもしれない。

すべての仕事は、「明日やる」が基本

仕事は毎日突発的に発生する。来た球をその都度打ち返していては、いつか破綻する。本書では、あらたなタスクが発生したとき、まずは下記の3つに分類をする方法を勧めている。

緊急レベル1 今すぐ
緊急レベル2 今日中に
緊急レベル3 明日やる

「子どもが熱を出した」という事態には、当然「今すぐ」対応しなければならない。しかし、すべてのタスクが本当に今日中にする必要があるものなのか。ましてや、今すぐに取り掛かるべきものなのか。書名にもなっている「マニャーナ」とは、「明日」を意味するスペイン語だ。本書の原タイトルは『Do It Tomorrow And Other Secrets or Time Management』。そう、仕事の基本は「明日やることにする」こと。それは、先送りとは違う。明日に回した仕事は、必ず明日にはやるのだから。

「すぐやる」仕事術だと、どうでもいい仕事ばかりが片付く

仕事には「忙しいだけの仕事」と「本当の仕事」があると、本書で紹介される。「本当の仕事」とは、自分にしかできない仕事、自分のビジョンにのっとった大切な仕事だ。すぐやる手法のみでは、対応しやすい「忙しいだけの仕事」ばかりが片付き、「本当の仕事」は後回しになってしまう。なるほど、これまで「すぐやる」仕事術でガシガシと働いていたけれど、疲れきるまで働いてもなんだか達成感が得られなかったのはそのせいか。

「すぐやる」方法オンリーだと、すべての仕事は「今すぐ」か「後で」に分類されてしまう。「後で」は、決してやってこない未来。だからこそマニャーナの法則では、「明日やる」もしくは「明日以降の特定の日にやる」と決める。「いつかやる」と思っていたことが、その日にやるべきタスクに変わる。

TO DOリストでは、仕事は終わらない

大切なのは、TO DOリスト(オープン・リスト)ではなく、WILL DOリスト(クローズ・リスト)を作ることだ。TO DOリストには、やるべきことが次から次に追加されていく。これだと、優先順位をつけたとしても、自分のできる仕事量を超えてすぐにパンクしてしまう。そうでなく、一日一日で完結するWILL DOリストをつくるのだ。それが、本書の言う「タスク・ダイアリー」である。紙の手帳でも、デジタルでもどちらでもいいそうだが、おれの場合は紙の手帳(ほぼ日手帳)を使っている。

新しく仕事が発生したら、超緊急なもの以外は、明日か明日以降のページに記入する。一日の仕事を終えるときには、明日のページのリストを確認し、線をひいてクローズする。明日やる仕事は、つまりこれだけである。その日のうちにできなかった仕事は明日に繰り越す。どうしても「今日中に」対処しなければいけない仕事が入ってきた場合は、クローズした線の下に記入する。

紙の手帳の利点のひとつは、書けるスペースが限られていること。詰め込み過ぎてはこなせなくなる。もうひとつは、手でいちいち書き写すので、繰り越しのタスクが増えているのを意識できること。何回も同じタスクを書き写すのは面倒だから、サクッとやっつけたいという意欲が湧く。

モチベーションを保つ秘訣は「仕事が予定通りに進む」こと

会議の予定などは、これまで通りGoogleカレンダーを使っているが、合わせてタスク・ダイアリーにも書き込んでおく。予定が多い日は、こなせるタスクも少ない。無理して多くの仕事を入れないのが基本だ。ページの半分が埋まったら、それ以上は書き込まず、翌々日以降にまわす(もちろん、〆切との兼ね合いも気をつけながら)。できるだけバッファを持たせて、不足の事態を消化できるようにしておく。もし仕事が早く済んだなら、他の仕事を先取りもできるし、遊びに行くこともできる。ゆとりは大事。

やる気を保つ秘訣は? それは、「仕事が予定通りに進んでいる」という実感だと本書は言う。そして大切なのは、本に書いてある通りのことだけをするのでなく、自分ならではのシステムを開発していくこと。マニャーナの法則を取り入れて、現在10日目。ちまちま変更を続けながら編み出した自分ならではのシステムを、また追ってお知らせしたい。