醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

面白法人カヤックの鎌倉新オフィスで山口揚平氏のトークを聴いてきた【小カヤック展】

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今年創業20周年を迎える面白法人カヤックのオフィスが、鎌倉に帰ってきたんだって!

場所は、御成通りと若宮大路の間。「鎌万の裏」と言えば、地元住民はピンとくるはず(鎌万とは、鎌倉住民の台所を支える水産中心のマーケットです)。下馬の交差点から見えるあの新しいビルみたいな建物は一体何だろう? と通る度に思っていた。そうか、あの大きい建物がまるまる2棟、カヤックのビルだったのか。

面白法人だけに、オープニングイベントも一風変わっている。これまでのカヤックの「しごと」が体感できる「小カヤック展」が開催されるのだ(カヤック展ではない)。

20th.kayac.com


その小カヤック展のプログラムのひとつ、「豪華ゲストと振り返る20周年」トークイベントで、ブルー・マリーン・パートナーズ株式会社代表取締役の山口揚平氏@yamaguchiyohei)のトークを聴いてきた。

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山口揚平氏のお仕事は、新しい産業の橋頭堡(きょうとうほ。兵法の言葉で、足がかりの意味)をつくること。メタ思考家という肩書きで、貨幣の歴史とお金の未来についての本を出したりもしている。

なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?

なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?

新しい時代のお金の教科書 (ちくまプリマー新書)

新しい時代のお金の教科書 (ちくまプリマー新書)

『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』は、本当に勤め仕事を辞めようと悩んでいた2013年に読んでいた。今日は「ご本人の話が聞けるなんて!」といそいそと出掛けていったのだ。

今日のトークは、近著『新しい時代のお金の教科書』の章立てにのっとって進むらしい。

第一章 ピカソがお金持ちだったわけ――お金の歴史
 1 お金の本質を見抜いていたピカソ
 2 お金の起源は記帳だった
 3 お金とは何か?
第二章 お金の正体を知れば、もっと自由になれる――お金の本質
 1 通貨の価値を決めるのは信用と汎用
 2 信用とは何か?
 3 汎用とは何か?
 4 お金の進化
 5 お金の持つ四つの要素
第三章 お金を中心に大きな転換が起こっている――お金の変化
 1 お金の変遷と四つの変化
 2 国家から個人へ――個人がお金を発行する時代へ
 3 空間から時間へ――インターネットと双璧をなす革新技術
 4 モノからコトへ――人はもはや物を求めていない
 5 タテからヨコへ――究極のネットワーク社会の到来
第四章 お金がなくなるかもしれない――お金の未来
 1 お金の進化の行き着く先、三つの方向性
 2 時間主義経済とは何か?
 3 記帳主義経済とは何か?
第五章 二一世紀のお金との正しい付き合い方
 1 お金のなくなる日がやってくる?
 2 人間とは何か? をあらためて問う
 3 私達はお金とどう付き合っていけばいいのだろうか
 4 お金について意識するべき10の習慣 *1

「以前の講演会では第三章までしかいかなかった」とおっしゃっていた。今回も順調に第三章のあたりで時間切れ。……あ、あとは本を買って読め!ってことなのね。

聴きながら取っていた手元のメモから。

山口揚平氏の自己紹介

「富の分配」ではなく、「富の創造」を目指す事業。2040年の新産業の芽をつくる仕事だ。主な分野はロボティクスや宇宙開発。劇団を株式会社化して利益を上げられるようにするなんてこともしている。

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第一章 ピカソがお金持ちだったわけ――お金の歴史

ピカソは経済の仕組みを上手に利用していた。例えば、ワインのラベルを描く仕事をしたら、報酬をお金でもらうのではなく、ワインでもらっていた。お金は一度もらったらその金額でおしまいだけれど、ワインは後から価値が出て値が上がる可能性がある。「おれがラベルを描いたワインの値が上がらないわけがない」って、なかなかの自信だとは思うけど。

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「そもそもお金って何?」ということで、お金の起源の話。一番最初のお金は、ミクロネシアのヤップ島の「フェイ」と呼ばれた大石。でも、この石を今の硬貨みたいにモノと交換していたわけじゃない。石に「誰が誰に何をあげたのか」を記帳していたカウンティングエコノミーが、すべてのお金の始まりだったのだ。なお、「バランスシートが読めるようになると人生が変わる」らしい。

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「モノ」は物語、つまり文脈を持っている、有機的な存在。お金はその文脈を漂白し、何にでも交換できる無機的なものに変える。お金は匿名。お金は孤立化を生む。

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第二章 お金の正体を知れば、もっと自由になれる――お金の本質

お金(たとえば「円」だとか「ドル」だとか「ビットコイン」だとか)の価値は、そのお金を発行する者(たとえば「国」「企業」、最近では「ネットワーク」)の信用度と、そのお金を使用している人の数、つまり汎用度で決まる。国がお金を発行するのが今では当たり前みたいになっているけれど、実はわずか400年のこと。代替通貨は、国が規制できないものだから嫌がられている。

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第三章 お金を中心に大きな転換が起こっている――お金の変化

ブロックチェーンは、インターネットの中に存在するものだと思われがちだが、実は全然別のもの。インターネットは空間をひろげる。インターネットでは、お金は口座から口座へと空間的に移動する。一方で、ブロックチェーン時間をひろげるブロックチェーンでは、お金はパラパラマンガのように口座と口座を一瞬で切り替わる。

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モノのビジネスは終わりを告げた。高い車なんて所有しなくても、みんなで便利な車をシェアすればいい。服はユニクロで充分だ。コトのビジネスも終わろうとしている。クックパッドFacebook……あらゆるSNSで「いいね!」をもらうことに人々は食傷気味だ。

モノにもコトにもお金を使わないとしたら、これからの人は何にお金を使うのだろう? 山口氏は、今後お金は「誰といたいか」その選択と継続のためだけに使われるようになると言う。

「個人がお金を使う」という仕組みも終わり、共同体が共同体のためにお金を使うようになる。時間主義経記帳主義経も超えた先にやってくる信用主義経では、究極「お金」というものは必要なくなるかもしれない

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ここでトークは時間切れ。詳細は本『新しい時代のお金の教科書』にて!

新しい時代のお金の教科書 (ちくまプリマー新書)

新しい時代のお金の教科書 (ちくまプリマー新書)

というわけで、あらためてじっくりと読んでみたいと思います。

*1:山口揚平『新しい時代のお金の教科書』目次より抜粋