醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕なんだかキャンプに出掛けるような気持ち

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  • 蓮を掘る
  • 泥まみれ
  • 泥をかいては
  • 山頭火

散歩してゐて、コスモスのうつくしさがハツキリ解つた、あの花は農家にふさはしい、或はこぢんまりとした借家にふさはしい、はかないけれどもしたしみのある花だ(茎もまた)。

種田山頭火 其中日記 (一)

長月十四日、嵐。台風19号ハギビス(フィリピン語で「すばやい」)が接近上陸。月はボイドから13時47分に牡羊座へ。

台風が近づいてきてテンションが上がる。世界が浄化されるのだな。

6時15分に起きる。睡眠効率70%、睡眠時間は7時間5分。

風呂で石井ゆかり『月で読む あしたの星占い』を読む。入浴時間は41分2秒だった。

寄せ来る濁った波と濁流を見ながらデスクワーク。ものすごく贅沢な気持ち。茶色い波は段々畑のように連なって押し寄せてくる。高潮が来ると、この家は流されるだろうか……ひとまず、いつでも避難所に逃げ出せるように準備だけはしておく。

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なんだか楽しくなってきてしまった。

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避難所に持って行く荷物を集めたら、なんだかキャンプに出掛けるような気持ちになってきた。サバイバルだ!

避難勧告発令。高潮の恐れありとのこと。津波が来た場合には、おそらく一番最初に流れるであろうこのアパート。逃げるかどうか悩む。

避難所の小学校も、そんなに海抜高くないしな。生理で動くの怠いし、体育館の冷たい床の上で寝るのは嫌だな……と、ひとまず自宅待機とする。

昼はジロウ作そーめんちゃんぷるー、自家製こーれーぐーすで。

日記を書く。

アメブロを書いてみたけれど、なんだかシリアスになってしまってうまくまとまらない。

ジロウは窓ガラスの補強などを始めたが、途中で嫌になったらしい。

「オクサンは僕を守る!」と言っていた。「僕を」じゃなくて「僕が」でしょうよ。

キャンプの気分が高まり、ジロウはカレーライスを作り始める。なお、ジロウは元・YMCAのキャンプリーダー、私は尾瀬高校自然環境科卒業生(しょっちゅう山に登っては調査をしていた)というフーフである。

なんだかお腹が空いちゃって、17時前に切り上げる。風が強くなってきて、窓際の机に座っているのも危なそうだし。

早くもカレーライス(キュウリ入り)で夕飯。日本酒をちょこっとだけいただく。

風が強くなってきた。そして、眠くなってきた。蒲団を敷いて19時そうそうにゴロゴロする。いちおう、いつでも逃げられるように普段着のまま。本を読みながらちょっと寝落ち。

目の前の電線が風で切れたようだ。青白い光りと赤い光りがスパークしている。ジロウが蒲団を敷く場所を変えさせる。

風でベランダの窓のサッシがたわんでいるらしい。ジロウが必死に手で押さえている。寝ぼけながら、頭に「のれんに腕押し」という言葉が浮かぶ。

やるだけのことはやった。あとは死ぬときは死ぬだけだ。

停電。ジロウは懐中電灯で「こわいよー」と言いながら晩酌。私は23時に爆睡。

〔日記〕レジはものすごい長蛇の列だった

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  • 庵のぐるりの
  • 曼珠沙華
  • すつかり枯れた
  • 山頭火

駅の物売の声がよくきこえる、風向のよい夜などはハツキリきこえる、だが何といふ言葉だかはあまりよく解らない、よく解つては困ります、べんたう、すし、ビール、まさむね、サイダーなどとやられては、食べたくなつたり、飲みたくならうではないか、風よ、向うへ吹け。

種田山頭火 其中日記 (一)

長月十三日、曇りのち雨。月は魚座、18時56分からボイド。

かすれていたペンを使い終わって、新しいペンに切り替えたらなんて気持ちいいこと。かすれたペンで書くと文字も乱雑になる。次は、ちょっともったいないけど早めに新品に切り替えるようにしよう……。

ちなみにペンはSuperプチ。保坂和志さんも愛用しているらしい(『書きあぐねている人のための小説入門』の中で紹介されている)。

パイロット サインペン スーパープチ SEG-10F-B 細字 ブラック

パイロット サインペン スーパープチ SEG-10F-B 細字 ブラック

書きあぐねている人のための小説入門 (中公文庫)

書きあぐねている人のための小説入門 (中公文庫)

私は手書きで小説を書いている。原稿用紙はB4サイズの四〇〇字詰めで、筆記用具はパイロットのスーパー・プチというサインペンの中字の黒。*1

風呂で石井ゆかり『月で読む あしたの星占い』を読む。入浴時間は58分5秒だった。

洗濯物を室内に干し、台風19号に備えて物干し竿は外してベランダの隅へ。外に出しているもろもろの物をしまう。

やまか(スーパー)へ買い物に出掛ける。納豆と豆腐(一丁が四分の一ずつパックになっている便利なものを発見)、非常食代わりの煎餅とアルフォート、長ネギを買う。

非常時前の買い出しをする人で、レジはものすごい長蛇の列だった。でも、あんまりぴりぴりとはしていない。前に並んでいた奥様が「すごいですねえ……」と笑いかけるので、「すごいですねえ!」と返す。どうかご無事で、また生きてレジに並びましょうね。

昼は納豆かけご飯、豆腐と海苔の味噌汁、にんじんの塩もみ。番茶を飲みつつしばし食休み。

久里浜へ台風対策に行っていたジロウが帰ってくる。避難所に行く場合の荷物をまとめている。

「避難所って、酒呑めるかなぁ」とジロウが言う。
「呑めないでしょ」
「えー、やだ! じゃあ、避難なんてしないもん」

夜はジロウによるジロ飯。鶏のからあげ、麩と小松菜とお揚げの炊いたん、長芋ザクザク。日本酒を二合くらい。

23時に寝る。ジロウはまだ呑むらしい。

*1:保坂和志『書きあぐねている人のための小説入門』中央公論新社(中公文庫)2008.11.25初版、p.235