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醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

佐々部清監督 「カーテンコール」

映画

小さな映画館はいい。最新の映画はめったにやらないけれど、手軽な値段で二本立てを見せてくれる。新しくできたテーマパークのような映画館は、上映前からエネルギーを使ってしまうような気がして苦手だ。昔からその街にある小さくて古びた映画館は、一歩足を踏み込むとほっとする。映画館が苦手な私でも、少し寛いで観られるような安心感がある。

時は昭和。そんな小さな二本立て映画館の幕間に、ちょっとしたステージをお披露目する芸人さんがいたらしい。「カーテンコール」は、そんな一人の幕間芸人にまつわる物語だ。

岩井俊二監督の「スワロウテイル」「リリイ・シュシュのすべて」のイメージが強かったので、エンディングになるまでヒロインが伊藤歩さんであることに気がつかなかった。初々しかった少女は、もうすっかり一人前のライターを演じている。

ライター橋本香織(伊藤歩)がかつての幕間芸人である安川修平(藤井隆史・井上尭之)の姿を追うというストーリーはよくあるパターンかもしれない。親子のすれ違いはお涙頂戴であるように感じていまひとついただけない。しかし、今は遠くなってしまった昭和という時代に、こんなふうに映画館を支えていた人がいたこと、そしてその頃の昭和の風を蘇らせたところが魅力的な作品である。