角田光代「空中庭園」
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2002/11
- メディア: 単行本
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先日観た映画の原作を読んでみる。
映画のように大爆発はしないかわりに、終わったときの爽快感もない。じわじわじわじわと理想の家族像が壊れていく様は、極限で破裂するよりもさらに恐ろしい。
そして、小説を読んだ後に映画のラストシーンを思い返すと、ぞっとする。どちらが絵里子の思い込みで、どちらが現実なのだろうか。
ねえ、そうすると、光も闇もまったく同じ意味を持つものだと思わない? でもなんで、住宅だけ光を信仰するみたいに大事にするんだろう?
(角田光代「光の、闇の」『空中庭園』2004.1 p.273)
おそらく、住宅だけじゃない。私たちは「光」ばかりを求めているのかもしれない。闇の部分をかえりみずに。
登場人物6人それぞれの語りで書かれたこの小説が、映画では上手く一体になっている。語りをそのまま語りとせずに、映像へ還元する巧みさ。ホテル野猿の装飾やクライマックスは、小説とはだいぶ異なる。そしてそれが、ぎらぎらと、より映画の迫力を高めている。
小説、映画。どちらも好きだが、どちらも恐い。