醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕私は傷ついていたのだ

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また無一文、銭がほしいな。
村のデパートで一杯また一杯、とうぜんとしてもどる。

種田山頭火 其中日記 (二)

睦月廿五日、曇りのち晴れ。

クライアントと事業者という関係性の仕事ではなく、互いに仲間として新しいことを創り上げる、それがこれからの仕事のあり方だと心に決める。

夢の中では、私はどこかの大きな寺院に修行に出されていた。修行と言っても、リハビリみたいなものだ。各々、毎朝その日にやろうと思う奉仕をカードみたいな帳簿に書き込んでおく。それを後で大僧正がこっそり読んでいるらしい。

私は、「今日は境内の散歩をしたい」と書いた。大僧正はそれを読んで、「それでは奉仕にならんのう」と、かっかっかっと笑った。

私は名簿に男の名前を書き込んでいる。古風な男の名前だ。若い武士の名前だと、世話役に教えられる。とりあえずこの寺で修行する間は、その名を使いなさい、と。

若くして無残な死に方をした武士、毎日繰り返しその名を書き込んでいると、自分が誰だったのかわからなくなる。その人は、私? 私の本当の名前は、なんだっけ?

夢の中では、三浦半島のその先に房総半島がまっすぐ連なっている。海を挟んで、一直線に。電車の路線は海で一度途切れるけれど、一直線だから路線名は変わらないのだ。

9時46分に目が覚める。どうも気が塞いでいる。米を炊いて、風呂で『目の真力』を読み終える。入浴時間は1時間7分43秒だった。

一年前の日記を読み返して、嫌なことを思い出してさらに気が塞ぐ。ネガティブなことはできるだけ書くまいと考えていたけれど、それでは自分に嘘をついている気がして書き留めておいた。私は傷ついていたのだ。

蒲田へ向かう。各種取材。取材と称して、合間に日本酒一合半とジントニックを少しいただく。鎌倉に戻って閉店間際の釈迦へ。一ノ蔵、ひよこ豆と鱈、牛の入ったおこわ。帰宅して0時44分に寝る。