日本展示学会の「展示論講座」を受講しました(4)~サイエンスコミュニケーター
講義まとめの続きです。
講義7■高尾戸美(合同会社マーブルワークショップ/一般社団法人日本サイエンスコミュニケーション協会)展示を活用する-サイエンスコミュニケーターの視点から-
サイエンスコミュニケ―ションとは?
科学・工学・技術が関係するコミュニケーション。「科学というものの文化や知識が、より大きいコミュニティの文化の中に吸収されていく過程」。狂牛病問題などを機に1990年代に登場。市民もサイエンスがわかるように対話をする取組み。2000年以降に日本に到来した。たとえば・・・
- 札幌市青少年科学館雪氷コーナー 改修:乃村工藝社(2012)自分の名前が投影された雪の結晶が降ってくる展示
- 箱根ジオミュージアム 残念ながら現在は休館中
国立科学博物館や日本科学未来館でサイエンスコミュニケーターの養成が行われている。
- 利用者に科学に関する知識を伝えることで理解増進と興味関心を高める
- まだ答えのない問題をコミュニケーションする
- 科学博物館(ロンドン)
「ウェルカムウィング」という近未来的な照明を使った展示。「アンテナ」と名付けられた展示は、大人を対象とし、現在進行中の問題を映し出す。たとえば、「遺伝子組み換えは是か非か」など。ディベートコーナーも設けられている。
- 北海道のヒグマ問題の展示
展示を見た人に意見を貼ってもらう。ピンクは賛成、緑は反対、白はどちらでもないという具合に、展示に参加できるようにする。
- 「Herueka!」(ヘルシンキ)
温暖化の展示。なんと、展示室が水浸しになっている。スタッフはド派手なアロハが制服。どんな暮らしをしたいか、展示を見る人が選ぶと、それによって温暖化の結末が変わる仕組み。
展示だけでは双方向コミュニケーションは難しい
- タイムラグあり
- 適切に返せないかも
- 意図しない方向に進んでしまうかも
1. 常設展示+SC(サイエンスコミュニケーション)
通常の展示にSCをつけくわえる。
- 「コックローチツアー」科学博物館(ロンドン)
ゴキブリになったつもりで展示を見る。ゴキブリのきぐるみを着て館内ツアーをする。
A Cockroach Tour of the Science Museum - YouTube
2. 常設展示×SC
- 「動物観察ダンス団」井の頭自然文化園
動物を観察してダンスで表現する。自分で表現するために動物を観察するようになる。ダンスは答えがないので自由に表現できる。井の頭公園の象のはなこは、いつもステップを踏んでいるのでダンスに表しやすい。
ワークショップデザイナーインタビュー④/高尾戸美さん、吉福敦子さん、浦山絵里さん - YouTube
- アクアマリンんふくしま
役者が3名参加したワークショップ。こどもたちにメヒカリになってもらう。そのあと本物のメヒカリに会いに行くための壮大なストーリーが組まれる。参加は仮設住宅に住んでいる子どもたちのみ。地元の人も貴重な魚であることを知らなかった。
こどもたちに一番人気のない展示を刷新してもらう。素通りしたお客さんを捕まえてインタビューする。
「感覚の迷宮展」では、「食べる」という感覚は展示できないのでワークショップとした。鼻をつまんでりんごジュースとオレンジジュースを判断したり、透明なオレンジジュースをつくったりする。同じクエン酸濃度でも、汗をかかない日は酸っぱく感じる。さらに自由研究に応用させるなどの発展もあり。市販の透明だけどりんご味やみかん味がする飲料に、どれだけ砂糖が入っているか保護者が気づく。糖は炭水化物として表示されているので一般の人は気がつかない。
まとめ
サイエンスコミュニケーションを取り入れると、社会の中で科学があたりまえのものとして浸透していく。「伝える」から「ともに未来をつくる」に変わる。