〔日記〕 ブルースを唄わせてくれという名のブルース
一月一日 雨、可なり寒い。
いつもより早く起きて、お雑煮、数の子で一本、めでたい気分になつて、Sのところへ行き、年始状を受取る、一年一度の年始状といふものは無用ぢやない、断然有用だと思ふ。
種田山頭火 行乞記 三八九日記
久しぶりのライブに備えて、昔のリハーサルの音源を聴き直す。3年前のものである。なるほど、おれはこんなふうに歌っていたのか。
おれの声には腹の底から支える安定感が足りない。恐れ多くも浅川マキや、AZUMI、それから最近よく聴くW.C.カラスと並べて聞いてしまうと、改めて不安定さを感じる。
年越しはハチさんの店でビトくんのライブを聴いた。聴かせる歌い方って、やっぱりこういうことか、と思う。
撮影:大町ジロウ
いつか人前で歌えたら気持ちいいだろうと思っていた。意外と早くその機会は巡ってきた。ステージの上で、おれは一個のエネルギー体になって、会場中を照射するところを想像する。
コーラスで、バンドメンバーの一員として歌うのはどうしたって向いていない。おれはどうやらブルースが好きらしい。そして残念ながら、自分でギターを弾く技術はあまりに乏しい。誰かおれに唄わせてくれないだろうか。でもそれなら、おれはもっとマジになって音楽を始めなきゃならないだろう。