かわいい彼女が世界最強の兵器だったら、どうする? 高橋しん『最終兵器彼女』
シュウジの通う高校は、北海道のイナカにある。観光地と水族館と自衛隊しかない、札幌まで出ないとなんも楽しいことのない街だ。
シュウジが5日前からつきあい始めたばっかりの彼女の名前は「ちせ」。
チビでドジで成績も中の下。
世界史だけが唯一得意。
口癖は「ごめんなさい」。
座右の銘は「強くなりたい」。
シュウジのことを「シュウちゃん」と呼ぶ。
告白されて、顔がかわいいからつきあい始めたけれど、「つきあう」ってどうしたらいいのか、いまいちよくわからない。
そんな、高校生らしい、ごくごく普通の恋をしていくはずだった。
- 作者: 高橋しん
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/07/15
- メディア: Kindle版
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ちせにデートをドタキャンされた日、シュウジは友達と買い物に来ていた札幌で空襲に巻き込まれる。そして、兵器と化した彼女の姿を見てしまうのだ。
「最終兵器」そして「彼女」。
まったく関連のないふたつの単語が交差して、終末の切ない恋が始まる。
それは、最初から終わることが約束されている、行き場のない想い。
この設定は、作者が電車の中でふと思いついたのだそうだ。
いつもは乗車時間を利用して本を読むのに、その日に限って手元に本を持っていませんでした。そういうときは決まって電車の中吊り広告をぼんやり眺めて過ごすのですが、ふと二つの単語が目につきました。「最終兵器(がどうのこうの)」「彼女(がうんぬんかんぬん)」。ぼーっと思いました。「彼女が最終兵器だったら、すごいイヤだよなー。*1
そして、電車を降りるまでの間に、全てのストーリーが出来上がってしまったのだという。いや、そりゃあイヤですよ、こんなに可愛い彼女が世界最強の最終兵器だったら。
このマンガを初めて読んだのは刊行されたばかりの2000年頃。私も、ちせやシュウジと同じ高校生だった。クラスメイトの男子がはまっていて、教室じゅうで回し読みをした。
ポケベルはもう古いけれど、まだ高校生でケータイを持っているのはマレ。LINEなんて当然無いから、ふたりは交換日記を始めるのだ(結局は、ちせだけしか書かないのだけれど)。
どうやって気持ちを伝えたらいいかわからなくて、何をしても相手を傷つけてしまうような気がして、もがいていたういういしい恋。それはなんだか自分の姿を描かれているようで、やっぱりのめり込んでしまう。
まだ17才。
そこに描かれた性描写は衝撃的で、わー、すごーく、エローい!と思いながら読んでいたけれど、あれからさらに17年が経ち、あの頃と倍の年齢になった私が今改めて読み返すと、とてもとても可愛らしい。
もっとおおっぴらな「ふゆみ先輩」もそのダンナの「テツ先輩」でさえ、可愛らしく見えてしまう。そうか、私は、もうこの先輩たちよりもずっと年上の30代人妻になったのか。ガーン。
あの頃、買うのをためらっていた全巻を、Kindleでまとめて買って、その夜のうちに1巻から最終巻まで読み通してしまった。まさに大人買いってやつである。
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*1:高橋しん『最終兵器彼女』7巻(ビッグコミックス)