うつ病はさっさとカミングアウトして、周りの人にサポートしてもらうべし。
仕事を辞めることが決まり、最後にオフィスへ出社した日。その朝に立ち寄った本屋で買ったのがこの『「うつ」とよりそう仕事術』だった。まだこの時には精神科に通院する勇気もなく、「やっぱり自分はうつ病なのだろうか?」と思いつつ、でもまだそれを認めたくはなかった。万が一うつ病であったとしても、また何とかして働ける状態に戻りたい。わらにもすがる思いでこの本を手に取ったのだ。
- 作者: 酒井一太
- 出版社/メーカー: ナナ・コーポレート・コミュニケーション
- 発売日: 2011/12/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 6人 クリック: 66回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
目次
うつ病になるのは恥ずかしいことじゃない
本書では、うつ病と診断された状態でも、どうにか仕事をやっていくための簡単に実践できる手法が紹介されている。その手法のひとつひとつもとても役に立ったが、いちばん刺さったのは下記の部分だった。
うつ病は隠すべきことでも、隠しきれる病でもありません。
むしろカミングアウトしてしまったほうが良い類の病気です。
そう私は考えています。*1
余談ですが、私はツイッターやフェイスブックなどのSNSで「心療内科に定期検診に来ている」ことを公に発信しています。〔中略〕「うつ病」となると、隠してコソコソしたり、心療内科や精神科の門を叩くのを躊躇されたりしている方が、思いのほか多いことに一石を投じたいと思っているからです。 *2
うつ病と診断されても、恥ずかしいことじゃないんだ。隠し続けなくちゃいけないことでもないんだ。この本を読んだ翌日、すぐに精神科に駆け込んだ。「病院に行ったら負けだ」と思っていたけれど、ちゃんと診察してもらうことでこんなに安心するなら、もっと早く行っておけば良かったと思った。
関連記事>>>精神科もしくは心療内科を受診するハードルをちょっと下げたいという話
一番大切なのは、白旗をあげること。「もう無理」な自分に気づくこと。ちゃんと病院に行くこと。周りの人に打ち明けて助けてもらうこと。
仕事をまた始めるかどうかは、その後に考えることだ。
頭に浮かぶことをすべて書き出す「GTD」はうつ病に効く
『「うつ」とよりそう仕事術』では、GTDの手法がオススメされている。GTD(Getting Things Done)とは、デビッド・アレンが提唱するワークマネジメントシステムのことだ。
私がうつ病を患っている人にはこの「GTD」が最適だと思う点は、3つあります。
1 信頼できない脳ではなく、頭の外に預けてしまおうという点(前項参照)
2 ワークフローが提示されている点
3 次にとるべき「物理的な」行動を決めようという点 *3
GTDについては、『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』が入門編としてわかりやすい。
- 作者: デビッド・アレン,田口元
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2015/11/26
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (6件) を見る
GTDは5つのステップに分かれている。その最初である「収集ステップ」が特に、うつ病の人に効果的なのだという。「収集ステップ」では、とにかく頭の中のことをすべて書き出す作業をする。
ノート2冊にびっしり小さな文字で、私の頭の中身の「すべて」を書き出しました。そして、最初からそれを読み直してみると、時折ポツポツと「~したい」という言葉が出てきて、ページを追うごとに段々とこういった前向きな言葉が増えているのを見つけて、楽になれたのです。*4
うつ病になると、「~したい」という欲求が無くなってしまう。唯一したいことは、「死にたい」だけになってしまうのだ。そんな状態を抜け出せる兆しがチラリとでも見えたら、ものすごい励みになる。
そして、仕事に復帰してからは、とにかく一つ一つ丁寧に、タスクを紙に書き出してから取り掛かるという習慣づけを行いました。「自分が何をするか、メモをしてから取り掛かる」たったこれだけのことで、気分の落ち込みに対抗できました。*5
私の場合は、仕事をする以前に、毎日の生活でさえ「えーと、次は何をやるんだっけ?」といちいち立ち止まってパニックになっていた。GTDを効果的に実践できるように、タスクシュート時間術のアプリ「たすくま」を使った。
タスクシュート時間術については、『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』で詳しく説明されている。
なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか? ~「時間ない病」の特効薬!タスクシュート時間術
- 作者: 佐々木正悟,大橋悦夫
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2014/04/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (6件) を見る
「たすくま」は、もともと仕事の進行管理で使っていたアプリだが、タスクの数をごっそりと減らし、ほんとうに日常生活に必要なことだけを毎日繰り返して表示するようにした。風呂に入って、化粧をして、洗濯機を回して……そういうひとつひとつをいちいちパニックにならずにできるように。
文字も書けないときは落書きでもいい ~ ユビキタス・キャプチャ
GTDの収集ステップに似ているが、本書で紹介される「ユビキタス・キャプチャ」もやってみた。これはノートやメモ帳を常に携帯し、浮かび上がってくる感情などを書き留めていく手法だ。書くのは必ずしも言葉でなくても良い。
実際、私がキャプチャーしたものは、言葉よりも、図形だったり、線を何本も引いたり、黒丸がたくさん描かれていたり、絵とも落書きとも呼べないものばかりです(その中には、わざわざ指を切って血で図形を書いたページがある始末です。そのときの激しい不安を捉えたかったのです)。*6
100円で買える文庫サイズのノートをいつもポケットにいれて、何か頭に浮かんだらどんどん書き留めるようにする。「~したい」という欲求もリストにしていった(このノート術については、またあらためてブログに書きたいと思う)。
仕事しない自分に存在意義はない? そんなことはない!
仕事を辞めたときは、不安で不安で仕方なかった。また自分は仕事ができるのだろうか? 仕事をして誰かの役に立っていないと、自分の存在意義はないと思っていた。
今ならわかる。存在意義は、他人に求めるものじゃない。存在していること、それだけですでに、価値がある。
とどのつまり、私にとってのこの本の効能は、「うつ病でも仕事に復帰できる力」を与えてくれたことではなく、「うつ病である自分を認められたこと」だったのだ。
- 作者: 酒井一太
- 出版社/メーカー: ナナ・コーポレート・コミュニケーション
- 発売日: 2011/12/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 6人 クリック: 66回
- この商品を含むブログ (14件) を見る