醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

精神科もしくは心療内科を受診するハードルをちょっと下げたいという話

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書こうかどうか悩んだけれど、やっぱり書くことにした。

2017年10月頃から「もしかして鬱ではないか」という兆候があった。寝ても寝ても眠くて仕方がない。仕事のパフォーマンスもすごく下がっている。ブログで日記を書くと暗い内容ばかりになった。

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2週間くらいすれば、すぐまた元に戻ると思っていた

役員になったばかりの頃だ。役員が鬱々としたことばかり書いて、会社のイメージを落としちゃいちゃいけないだろうと、ブログの更新を止めた。でも毎日は、薄く靄がかかったように過ぎてゆく。アクセルを踏み込もうとしても、すかすかと空回りするばかりだ。

そういうことはこれまでにも何度かあった。大きい仕事の後、ずどーんと気分が落ち込んでも、2週間くらいペースダウンすればまた元に戻る。今回もそういうものだろうと思って、会社のみんなには「ちょっとウツっぽいかも」とだけ伝えた。自分でもおおごとになるとは思わなかった。

でも、どれだけ経ってももとに戻る兆しがない。そればかりか、これまで普通にできたことができなくなっていく。会議で話されている言葉が頭に入ってこない。メールを読み返しても普通の日本語が解読できない。一番自信を持っていた執筆の仕事も、書きたいことも書く内容も決まっているはずなのに、ワードを開くと手が凍り付いたように固まってしまう。




自分は本当に「うつ病」になってしまったのではないか?

年末年始に合わせて3週間休みをもらったけれど、結局、元には戻らなかった。もう辞めるしかないと決める。一区切りついて、他のことを始めようとしたら、またパニックが襲ってくる。このまま自分は何にもできなくなってしまうのではないか? もしかして本当に「うつ病」になってしまったのだろうか?

田中圭一さんの『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』を読む。確かに症状が限りなく似ている。まさか病院に行くほどのことではないだろうと思っていたけれど、ちゃんと診てもらって、この状態に名前をつけてもらえると少し安心するかもしれない。

予約する勇気がなくて、飛び込みで入れる病院を探した

それにしても、精神科の門をくぐるのは勇気がいる。電話予約をする勇気がなくて、予約が無くても診てくれる病院を探した。その日を逃すと、翌日からまた怒濤のように忙しい日々が始まってしまうという不安もあった。病院の前の通りを何度か往復する。玄関のドアに手をかけても、まだためらう。ようやく決心して、中に入る。消毒薬の臭いがする普通の待ち合い室だ。

皆既月食の満月の日。午後の診察時間が始まったばかりなのに、待合室はすごく混み合っている。初診で、予約もしていないことを窓口で告げる。どうやら同じタイミングで他にも3人、飛び込みの初診者が申込しているらしい。「とてもお待たせしてしまうけれど、大丈夫ですよ」と空いている席を案内される。

順番が来た。どんなふうに話をすればいいのか悩んでいたけれど、ちょうどいい感じで相づちを入れてもらえる。思わず涙があふれてきても、気にすることなく聞いていてくれる。

まだまだ自分は大丈夫だと思っていた。軽いウツに過ぎないのに、病院を受診したら申し訳ないなんて考えていた。でも、「10月のまだ軽い状態のときに、一度病院に来てみたらよかったですね」と言ってもらう。そうなのか、「ちょっとおかしいかも?」っていうくらいでも、病院に来ていいんだ。




家族でも友達でもない人に話を聞いてもらえる効用は大きい

ウツの悩みは友達には相談しづらい。心配されてしまうのも、励まされるのも、どちらもつらい。日常生活にはまったく関係のないお医者さんにであれば、「こんなくだらない話をしていいのか」とか、「こんなことを言ったら傷つけてしまうかも」とか悩むことなく、ただ頭に浮かんだことを話し続けられる。そしてそのひとつひとつを「うん、うん」と聞いてもらえる。

話しているうちに、ちょっとずつ頭の中がクリアになってくる。そうか、私は限界まで自分を使い尽くしてしまったのだな。そういえばこれまでも、ウツっぽくなるときは同じパターンだった。いろんなことを請負過ぎて、自分では全部できる自信があるのに、こなせない自分に戸惑う。それで請け負ったことを減らすと、突然空いてしまった空白に不安になる。自業自得。私は自分自身が飽和してしまわないように、気をつける必要があるんだろう。

先生はニコニコとしながら冗談っぽく言った。「しばらく、なーんにもしないで休むことです。ドクターストップですよ。必要なら、診断書はすぐにでも書きますからね」

ああ、そんな簡単なことだったのか。




「まだ大丈夫」と思っているうちに、一度病院に行ってみたほうがいい

その日も、何度か人身事故で電車が止まった。同じ時間に死に呼ばれて、帰って来られなかった人もいるのだ。もし、飛び込みで診察してもらえる心療内科や精神科があることをその人たちが知っていたら、違う結末になったのではないか?

「いやいや、自分はまだ病院に行かなくても大丈夫、なはず」と思っている人がこれを読んでいてくれたら、まずは一度、病院に行ってみることをおすすめします。大丈夫かどうかは、やっぱり自分では判断できないものだと思うから。

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