醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

小泉吉宏 「ブッタとシッタカブッタ① こたえはボクにある」

ブッタとシッタカブッタ〈1〉こたえはボクにある

ブッタとシッタカブッタ〈1〉こたえはボクにある

中学生の頃、人と向かい合うのがひどく苦手でした。意味もなくあがってしまって、全然話すことが出来ない。きっと周りの人は大人しい子、悪く言えば暗い子だと思っていたことでしょう。「本当の自分はもっと陽気で明るいのに」と、何度心で呟いたことか。

そんな日々のなか、図書館でこの本と出逢いました。仏教の考え方をソフトに教えてくれる、全編カラーの四コマ漫画たち。案内役は仏陀もとい、豚の「ブッタ」、主人公は迷える豚「シッタカブッタ」。

この本を読んで、私は始めて「本当の自分」など無いことに気が付きました。「本当の自分」と思っていたのは「理想の自分」。この、臆病で内気なのが自分なのだと。自分はここにそのまま居て、「本当の自分」が隠れていることなどありえないのだと。

すっと肩の荷が降りたように感じました。自分は、ここにしか居ない。そのまんまの自分をまっすぐに見て、認めよう。そして、変えたいところは少しずつでも変えていこう。そんなふうに、打開策にたどり着くことが出来たのです。

地元の本屋さんでこの本と再会し、懐かしくなって買いました。読み返してみると、今だからこそわかることもたくさんあります。これだから、人生は面白い。