醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

白濁(四十九)

美里を終電間際の電車で見送り、携帯電話の設定は諦めてそのままぱったりと寝た。翌日、パソコンを開いたら、パソコンでしか使わない方のアドレスに坂井から長いメールが二通も届いていた。

〔日記〕AIが世界に浸透したその後

AIが世界に浸透した、その後の未来の夢を見た。人口は激減し、都市にはほとんど人は住んでいない。巨大なビルディングは、オフィスビルでもデパートメントストアでもなく、それそのものがAIのサーバーとして建てられている。タワーレコードの後進がその良い…

白濁(四十八)

「でもさ、長かったよね。何年?」 哀れむでもなく美里は言った。 「七年」 「なんで結婚しないのかなって思ってた」 「しないよ」 別に、子ども産みたいわけでもないし、とは、母親になって間もない美里には言えない。

〔日記〕働くとは

働くとは、「はた」(他の人)を「らく」(楽)にすることだと、何かの本に書いてあった。それは、自分を犠牲にして他人に尽くすのではないのだ。自分が「楽」でいることが先なのだ。「楽」を膨らませて、「はた」の人も一緒に楽しくなればいいのだ。

白濁(四十七)

「――なんだけど、どう思う?」 「あ、え? ごめん、なんだっっけ」 もともと美里のマシンガントークにはあんまりついていけなかったのだけれど、相づちくらいはちょうどよく打てるつもりでいたのに、今日ばかりは全然話の内容が頭に入ってこない。まだほとん…

〔日記〕公式サイトをリニューアルする

自分の公式サイトをリニューアルする。そのままポートフォリオとして、A4の紙に印刷もできるように。

〔日記〕このあたりは真言宗なのだな

工事が終わった成就院にお参りし、極楽寺にも行く。このあたりは真言宗なのだな。そのままてくてくと稲村ヶ崎まで歩き、ビールを買う。夕日を眺めつつ、トンビに警戒しつつシュウマイをいただく。目の前の芝生では小池龍之介和尚がヒーリングっぽいことをし…

白濁(四十六)

思った通り、美里は先に店についていた。会うたびに、ひとまわりずつ丸く、大きくなっている。濃いアイメイクだけは学生時代とかわらない。 「結衣の好きそうな店だね。なんかすごく変」 と美里は言った。混み合った店内に対して、マンションのちょっと広め…

〔日記〕その場で舞い踊る

ジロウに「やさしいナポリタン」を作ってもらう(トマトケチャップが足らなかったのだ)。日没前に散歩にでかける。鶴岡八幡宮にお参り。おみくじにたいへん嬉しいことが書いてあってその場で舞い踊る。

白濁(四十五)

携帯を解約した。電話番号だけ残して、キャリアも変えてメールアドレスも替えた。坂井からのメールが大量に保存されている携帯電話を持ち歩きたくなかったから。素っ気ない要件だけのメールの合間に、まれにだけれど坂井の本音がほろっと書き込まれたものも…

〔日記〕Font Awesomeを導入する

Instagramのフォローボタンを設置しようと思って、Font Awesomeを導入する。しかし結局はフォローボタンは置かず、アイコンだけ使用することにした(CSSがうまく実装できなかったのだ)。

白濁(四十四)

「来週行く」「早く顔が見たい」 坂井から短いメールが届いていた。 ずっとほったらかしだったのに、こんなときにだけ何度も連絡してくる。 もう一度坂井に会うのは恐怖だった。はぐらかし続けてもいられない。 「ごめんなさい」「他に好きな人ができた」 同…

〔日記〕奇跡が起きた!

二日酔いで早起きを断念する。7時起床。パスカルズの横浜でのライブの予約が取れないうちに完売になってしまったのが哀しく、キャンセル待ちとかでなんとか取れないだろうか、とTwitterで検索する。 たまたま、黄昏エレジーへ大谷氏のライブを聴きに来て下さ…

白濁(四十三)

毎日のように、どこかの飲み屋で待ち合わせては、わざと店を出る時間をずらし、終電まで私の部屋で性急に体を重ねて帰る。タケシさんは、いろんな店で「最近よく会うね」と常連たちに言われている。

〔日記〕ウユニ塩湖のように

波打ち際で浜千鳥のつがいっぽい鳥がテトテト歩いていた(後で尾瀬高校の後輩が教えてくれたところによると、ミユビシギという鳥らしい)。日が差してきた。神々しいまでの朝日だ。光明寺にお参りして帰路につく。

白濁(四十二)

レスになっていたとしても、夫に不倫相手が出来ると夫婦の営みも復活するんだって聞いたことがある。旦那の何かが活性化されるのか、それに妻も触発されるのか。うっかり「やっぱりお前が一番だ」なんて睦言を吐いた日には目も当てられない。 「妻とはもうず…

〔日記〕紺色の服たちがレベルアップして戻ってくる

「毎日服を選ぶ余裕なんてない」と思っていて、同じ服を何着も持っていた。スティーブ・ジョブズとか、マーク・ザッカーバーグとかを真似て。ああ、でもそれは、女の生き方としては大変辛いものだったかもしれない。

白濁(四十一)

暗い夜の中に部屋の壁も窓も何もかも、境目という境目は全部消え去って、夜空の星が頭上にも体の下にも広がっている。そのなかにタケシさんの体の形をした熱があって、私の体の片面はその熱を感じ続けたまま、果てしない夜のなかに浮いているのだ。 そんなふ…

〔日記〕ひとり上手と呼ばないで

ほろ酔いで、中島みゆきの「ひとり上手」を歌いながら帰る。こないだ東急の夜中のお惣菜売り場で、ジャジーな「ひとり上手」のインストゥルメンタルがかかっていたのだ。夜のお惣菜売り場に「ひとり上手」はあまりにも淋しいと思った。

白濁(四十)

「いい部屋だね」 そう言うタケシさんは六畳のアパートには全然似合わない。一人暮らしを始めた娘の家に遊びに来たお父さんみたいだ。そのシャツの、ぽってりと出たビール腹ならぬホッピー腹に触れてみる。タケシさんはあごをひいて私を見下ろした。男性とし…

〔日記〕書いてあったサイズよりも大きくて

押し入れ用のハンガーラックが届いたので組み立てる。レビューに「組み立ててみたら書いてあったサイズよりも大きくて押し入れに入らなかった」というのがあったけれど、まあ大丈夫だろうと思って油断していたら、ほんとに入らなかった。絶妙に梁の部分に引…

〔日記〕「ねこめし屋」のアプリにはまる

二日酔いでぐだぐだ寝ている。ぐだぐだしているうちに、「ねこめし屋」のアプリにはまる。ゲームとしては単純操作だけど、キャラクターと物語が面白くて、次の物語が解放されるまでついついやりこんでしまう。4人目のバイト、悟り世代のサトルくんのところま…

白濁(三十九)

誰かと並んで歩きたいと思っていた。なんでもない、くだらないことばかりをずっとしゃべって。どこに行こうとか、そういう行き先もあんまり決めずに。ただ隣にいるから、それでいいと。そういう相手が欲しかった。 もはや男性じゃなくてもいいのかもしれない…

〔日記〕少年みたいに

短い髪がだいぶ馴染んできた。福西くんのすすめでもみ上げ? を長めに残してもらったけれど、やっぱりもう少し短くても良かったかな、と思う。少年みたいに。