日一日を丁寧に生きるために(過去記事まとめ 二〇〇六年一月~八月)
これらの記事を書いていた二〇〇六年は新宿区に棲んでいた。大学も三年生になり、東京の暮らしにも慣れてきたが、それでもどうしても抜けない違和感があった。
なぜみんな、ドアの閉まりかけた電車に猛スピードで飛び乗ろうとするのか。なぜ、点滅を始めた青信号を駆け抜けなくてはいけないのか(十代の青春を過ごした村には、信号機はたったひとつしかなかった)。なぜだか知らないが、誰もが生き急いでいるように見えた。そして人間らしさを感じない。道を開けてほしいときの、無言の威圧。イヤホンをしたままの、コードの絡まった機械のような行進。周りは見ない。携帯電話以外は見ない。満員電車で見知らぬ人と密着することにも慣れてしまう。みんな、ネジをきりきりに巻き上げて足早に通り過ぎて行くおもちゃの兵隊のようだ。
もっと人間らしい生き方をしたい、もっと本能に寄り添った……。そうして大学時代は、日々に魔法をかけるように、こつこつと部屋の掃除をし、自分で料理をしていた。ときおり嫌になって自暴自棄になったりしながらも、魂が抜けちゃったまま高速回転を続ける都市のなかで、じわじわとマイペースに生きていた。
やらなくてはいけない仕事を後回しにして昼となく夜となくだらだら過ごしていると、ふと思い出す本がある。梨木香歩『西の魔女が死んだ』。新刊本を書店で見かけた時は、「...
時間の使い方が下手くそだったおれを助けてくれた本。藤沢優月「夢をかなえる人の手帳術」。夢をかなえる人の手帳術作者:藤沢優月出版社/メーカー:ディスカヴァー・トゥ...
『おいしいヒミツ』は、スタイリストの高橋みどりが、五人の料理家(有元葉子、高山なおみ、たなかれいこ、長尾智子、米沢亜衣)とつくった本だ。ひとりひとりに違う「食べ...
みんないつも前のめりで、五分先を生きている。もしも、それが一年や十年先なら、きっとなにかの意味が出てくるのだろう。でも五分先だとただせわしないだけなのだ。みんな...
珈琲時光 [DVD]出版社/メーカー:松竹ホームビデオ発売日:2005/03/29メディア:DVD購入: 6人クリック: 85回この商品を含むブログ (179件...
向田さんが残した最後の小説と、エッセイをまじえた一冊。特にエッセイに、心に残るものが多い。例えば「独りを慎む」。自由は、いいものです。ひとりで暮らすのは、すばら...
海のふた (中公文庫)作者:よしもとばなな出版社/メーカー:中央公論新社発売日:2006/06メディア:文庫クリック: 8回この商品を含むブログ (66件) を...
去年のちょうど今頃、盛岡で自動車の教習を受けていた。合宿中の滞在はビジネスホテル。ヒールでコツコツとロビーの床を鳴らす。ホテル暮らしはなんだか贅沢な気分だ。家族...
なんくるなく、ない―沖縄(ちょっとだけ奄美)旅の日記ほか (新潮文庫)作者:よしもとばなな出版社/メーカー:新潮社発売日:2006/03/28メディア:文庫クリ...