B:読書案内
読み出せばとまらぬ、源氏物語。千年もの時を越えても、人の情けとはこうまで変わらないものなのか。自らを戒めながらも怨霊に身をやつす六条の御息所の苦しみ、痛いほど。あさきゆめみし(2) (講談社漫画文庫)作者: 大和和紀出版社/メーカー: 講談社発売日: …
源氏物語の翻訳は数あれど、わかりやすく読めるもの、とっつきやすいものと言えば大和和紀さんの「あさきゆめみし」である。ユーモラスな末摘花の帖は漫画ならではだ。あさきゆめみし(1) (講談社漫画文庫)作者: 大和和紀出版社/メーカー: 講談社発売日: 2001…
陰陽師、第二巻。清明と博雅の掛け合いに乗せられ、するすると読み終わってしまう。端正な清明と実直な博雅は、正反対のようでいてなかなか良いコンビだ。 「離れるものか。それはあの坊主に懸想しておきながら。誰が、この下衆の女から離れてやるものかよ。…
画像だと見えづらいかもしれないのだけれど、この表紙の絵がなんとも素敵。棒人間ならぬ棒猫と、骨の魚が並んでいる。「夜中の薔薇」と並べるとなお良し。両方とも司修さんの絵だ。眠る盃 (講談社文庫)作者: 向田邦子出版社/メーカー: 講談社発売日: 1982/06…
板前さんから借りた本。流行した頃には読まず、今頃になって縁が繋がった。映画化されたものを観ていたせいで、読んでいると俳優の顔が浮かんでくる。伊藤英明が演じた源博雅は、たおやかだったような気がする。だが、小説の博雅は無骨な武士だ。琵琶には精…
早稲田に古本屋は数あれど、五十嵐書店*1ほど立ち入るのに緊張を要する古本屋は無い。小汚い格好の一学生としては、「どうもこんなものが来店してしまって申し訳ありません」という気持ちで自動ドアを潜る。綺麗に整頓された本。ギャラリーのような展示。長…
確かこの本は、浪人時代に読んだはずなのだ。でも、憶えていない。なぜか、解説のおすぎさんの文章だけを覚えている。やはり他のことで頭がいっぱいのときに、現実逃避のようにして本を読んでも駄目なのですね。がんばりません (新潮文庫)作者: 佐野洋子出版…
向田さんが残した最後の小説と、エッセイをまじえた一冊。特にエッセイに、心に残るものが多い。例えば「独りを慎む」。 自由は、いいものです。 ひとりで暮らすのは、すばらしいものです。 でも、とても恐ろしい、目に見えない落とし穴がポッカリと口をあけ…
向田邦子さんの最後のエッセイ。彼女の死によって十四回で中断されてしまった連載の他、未刊行作品が収録されている。女の人差し指 (文春文庫 (277‐6))作者: 向田邦子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1985/07メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 7回この商…
フジテレビのドラマ「西遊記」に影響され、原作を読んでみたくなった。『李卓吾先生批評西遊記』の全訳である岩波文庫版西遊記は、柔らかな語り口で書かれているのでとっつきやすい。絵本を読むような感覚で西遊記の全訳を味わえる。例えば、こんな訳。 「大…
「僕」がともに暮らしたブラフマンとは、一体どんな動物だったのだろう。そして僕はどこの国の、いつの時代に生きているのだろう。ブラフマンの埋葬作者: 小川洋子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/04/13メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含む…
空中庭園作者: 角田光代出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2002/11メディア: 単行本 クリック: 12回この商品を含むブログ (84件) を見る先日観た映画の原作を読んでみる。映画のように大爆発はしないかわりに、終わったときの爽快感もない。じわじわじわじわ…
良いエッセイは時間を忘れさせる。小説のように引き込みはしないけれど、読者の時間にそっと寄り添う。紡ぎだされる子ども時代の話は私が生まれるよりずっと前のこと。それなのに、何故か懐かしい。そんな時代を私も生きていたような気にさせる。 (文春文庫)…
向田邦子 最後の炎 (中公文庫)作者: 小林竜雄出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2000/10メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る向田邦子、乳がんの発症から台湾での飛行機事故による突然の死までの六年間を、彼女と関わりのあっ…
夜の公園作者: 川上弘美出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2006/04/22メディア: 単行本 クリック: 16回この商品を含むブログ (126件) を見る先日精神不安定の折に、こんな日は本でも買って読みふけろうと思い、生協の本屋へ立ち寄った。川上弘美さんの「…
夜のある町で作者: 荒川洋治出版社/メーカー: みすず書房発売日: 1998/07メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 12回この商品を含むブログ (26件) を見る背表紙に引き寄せられてふいに手に取り、ぱらりと捲って驚いた。飛び込んできた文字は「土屋文明記念文…
なんでもない日常。そして、そこにさす暗い影。今にも爆発しそう。でも、しない。いっそ爆発してしまえば気が楽なのに、しない。決壊ぎりぎりのダムのように。そんな日常は小説の中だけの絵空事じゃない。おそらく、誰の一日にも潜んでいること。普段目を背…
母が突然庭に来る猫を「ゼツリン」と呼び始めた。何事かと思えば、江國香織の「ウエハースの椅子」に感化されたらしい。ウエハースの椅子 (ハルキ文庫)作者: 江國香織出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 2004/05メディア: 文庫 クリック: 7回この商品を…
みんないつも前のめりで、五分先を生きている。 もしも、それが一年や十年先なら、きっとなにかの意味が出てくるのだろう。でも五分先だとただせわしないだけなのだ。みんな急いでいる、むだにエネルギーを使っている。*1 王国〈その3〉ひみつの花園作者: よ…
私は老婆心で定職を持たないことに不安はないのかと訪ねてしまう。彼女は大きな目をこちらに向け、 「あったけれど、私はこれ(と刺繍をする手ぶり)をやっていけばいい、これをしている自分が自分、そう思えるようになって不安がなくなりました。その時間が…
『おいしいヒミツ』は、スタイリストの高橋みどりが、五人の料理家(有元葉子、高山なおみ、たなかれいこ、長尾智子、米沢亜衣)とつくった本だ。ひとりひとりに違う「食べる」があって、「おいしい」がある。それぞれの料理家の考え方と、名刺代わりの一品…
人気のブログの秘密とは。アルファブロガー 11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから (NT2X)作者: FPN,徳力基彦,渡辺聡,佐藤匡彦,上原仁出版社/メーカー: 翔泳社発売日: 2005/10/21メディア: 単行本購入: 5人 クリック:…
さんざん、女としてしたいほうだいしつくして、浮世にあきたら、さっと頭まるめて尼になって、色気ぬけてもまだ、大の男がなんぼうでも奉仕者になってあらわれる。生まれながらの人徳やのうて、これこそ女徳ですわ。*1 女徳 (新潮文庫 (せ-2-2))作者: 瀬戸内…
六歳で女を知り、以来千人斬りと称されるほど数多くの女と渡り合った鮫島六右衛門。 まるで昭和の源氏物語のようなこの小説は、実在する人物をモデルにして描かれたそうだ。年老いた六右衛門を中心に、回想場面を孕んで展開していく。 幼いころ初めて関係を…
特別な事件が描かれているわけではない。何気ない日常。どこの家にもありそうな風景。それをぱりっと切り取って見える形にする。まるで写真を撮るかのように。思い出トランプ (新潮文庫)作者: 向田邦子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1983/05メディア: 文庫…
「NEWS23|TBSテレビ」の「筑紫録」初回、一月九日の筑紫哲也さんと養老孟司さんの対談を見た。テーマは「脳化社会」への警告。その中でニート問題が取り上げられていた。何故こんなにフリーターやらニートやらが増えているか。それは、個性重視の社会、夢を…
時間の使い方が下手くそだったおれを助けてくれた本。藤沢優月「夢をかなえる人の手帳術」。夢をかなえる人の手帳術作者: 藤沢優月出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン発売日: 2003/03/31メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック…
ブログについて書かれた本というと、週刊誌のような装丁でランキングや人気ブログの紹介が中心のものや、初めてブログに挑戦する人のための教則本、ブログ成功者のインタビューを集めた厚い本くらいしか知らなかった。新書とは新鮮で、思わず購入。ブログの…
やらなくてはいけない仕事を後回しにして昼となく夜となくだらだら過ごしていると、ふと思い出す本がある。梨木香歩『西の魔女が死んだ』。新刊本を書店で見かけた時は、「これはタイトルからしてファンタジー……しかもホラー?」と思って尻込みしていたが、…